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古都・奈良に春を告げる風物詩──1273年も続く伝統「お水取り」の椿の造花

2025.01.22

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〔特集〕早春の大和路を行く 古都・奈良の椿 椿は日本原産で、文字どおり春を告げる花木。『万葉集』で初めて「椿」という漢字が用いられ、平城京の宮殿や貴族の庭園に椿が植えられたと伝わります。今も「文化としての椿」を大切に守り伝える奈良の人々や古刹を通して、世界に誇れる日本の椿文化を見つめたいと思います。前回の記事はこちら>>

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椿の造花──東大寺二月堂修二会
1273年続く、お水取りの荘厳用の和紙花

桶に整然と並べられた椿の造花。芯はタロウの木(タラノキ)。写真/本誌・坂本正行

桶に整然と並べられた椿の造花。芯はタロウの木(タラノキ)。写真/本誌・坂本正行

東大寺二月堂の修二会(お水取り)は、古都・奈良に春を告げる行事として親しまれています。752年の大仏開眼の年に始まって以来、一度も絶えることなく続けられてきた不退の行法で、椿の造花が二月堂本尊十一面観音菩薩像に供えられることが知られています。



二月堂修二会(お水取り)は、3月1日(旧暦の2月1日)から14日間(15日未明まで)行われる。「お松明(たいまつ)」は、期間中毎日あげられている。

二月堂修二会(お水取り)は、3月1日(旧暦の2月1日)から14日間(15日未明まで)行われる。「お松明(たいまつ)」は、期間中毎日あげられている。

「造花の起源は定かではありませんが、少なくとも平安時代には作られ、そして、300年前には、ほぼ今と同じ造花が作られていたことが記録でわかっています。ここ東大寺のお水取りで重要なことは、修行に入る練行衆が自ら造花を作って捧げること。大仏殿の前の八角燈籠には、『阿闍世王授決経(あじゃせおうじゅけつきょう)』という経の一節が書かれています。貧しいおばあさんがお釈迦様に供えた灯明だけが終夜燃え続けたという『貧者の一灯』として知られる話ですが、この話の続きに、王様がお釈迦様にお花を捧げる際、他人に命じたものではなく、自ら作った花を捧げることで初めて功徳を認めてもらえたという説話があります。心から供養することの尊さを説いたものですが、練行衆が自ら造花を作ることはここに繫がっているのです」と橋村管長猊下。

二月堂に供えられた造花。生木の椿の枝につけて荘厳される。写真/東大寺提供

二月堂に供えられた造花。生木の椿の枝につけて荘厳される。写真/東大寺提供

11人の練行衆は、「本行」に先立つ、「試別火(ころべっか)」の2月23日に、二月堂須弥壇を荘厳する造花の「花拵(こしら)え」を行う。

11人の練行衆は、「本行」に先立つ、「試別火(ころべっか)」の2月23日に、二月堂須弥壇を荘厳する造花の「花拵(こしら)え」を行う。写真/木村昭彦

紅白の花弁に糊を打つ。黄色の芯を含め和紙は京都・黒谷和紙。

紅白の花弁に糊を打つ。黄色の芯を含め和紙は京都・黒谷和紙。写真/木村昭彦

開山堂の椿を「糊こぼし」と呼ぶ由来にかかわるとされる造花の椿は、菓子に写されるなど、春を待ちわびる奈良の人に愛され続けています。

(次回へ続く。この特集の記事一覧はこちらから>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年02月号

家庭画報 2025年02月号

撮影/大泉省吾

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