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2月の花 西王母椿「代替わりの茶事」戸田博さん連載・季節の茶花

2024.01.19

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谷松屋戸田商店 季節の茶花 谷松屋十三代目当主の戸田 博さんが、茶席の花について語ります。2月の花は「西王母椿」です。前回記事を読む>> 連載一覧はこちら>> 待望の連載書籍化!>>

2月 西王母椿
代替わりの茶事

語り/戸田 博

2022年6月に、谷松屋戸田商店では私から長男に社長職を譲りました。おかげさまで戸田商店は14代の名を重ね、次の世にまた繫ぐことになります。

この節目にあたり、父と子の二人でお茶をいたすこととなりました。といっても、特別な取り合わせをしたわけではありません。茶道の家元などのお茶の家ですと、継承の際に使う道具が決まっていますが、我々は感覚的に生きている商売ですから、その時々に気に入ったものを使っていくことが多いのです。


父・博さんに茶を点てる戸田貴士さん(左)。その茶を喫する博さん(右)。「祖父と孫の間の繫ぎ役だった私がいよいよ引退というところまで来た。目利きだった父が、かつて私の考え方を尊重してくれたように、貴士も自身の考えで、何事にもとらわれずやっていってほしい」と博さん。

床の間に掛かる俵屋宗達の「船子(せんす)和尚 」は、のんびり釣りをしながら跡継ぎを待つ僧の姿を描いたもの。父鍾之助(しょうのすけ)がよく口にしていた言葉に「世の中は、位も継がず、名も継がず」という句があります。官位や位を欲しがるわけではなく、名誉を欲しがるわけでもない。そういう達観した境地へと繫がる絵なのですが、たまたま息子の貴士(たかし)が見つけてきて手に入れた。掛け物に合わせて、青磁花入に西王母椿を入れました。

俵屋宗達がさらりと描く高僧の姿に格調高い七官青磁花入を合わせて

西王母椿(せいおうぼつばき)、木五倍子(きぶし)
七官青磁下蕪花入 龍泉窯 中国・明時代
床の間の掛け物は、江戸初期の画家俵屋宗達が描いた「船子和尚」図。悟りをひらいた徳誠禅師という和尚が、人里を離れて隠遁し、船の上で釣り糸を垂れながら自らの法を継ぐ人物を待っている。「一見地味ですが、よく描けたプロ好みする絵です」と博さん。

添えた木五倍子(きぶし)が椿の枝と重なるように掛け物のほうへと伸びていき、空間の広がりを感じさせます。中国・明時代のこの七官青磁下蕪花入は、竹の節のような線が胴に7本入るのが特徴で、「筍花入」という別名があります。

茶杓は表千家六代家元の原叟(げんそう)作。私が若い頃に東京での修業を終え、戸田の家に帰ってきたときにも、父がお茶をしてくれたのですが、そのとき父はこの茶杓を使いました。

「雪ふりにねくら尋る雀哉」との句が添い、子雀が家に戻ってきたと喜んでくれている顔が浮かびます。そんな思い出もあり、私はこのたびの息子との茶に際し、茶杓はこれを使うと決めていました。茶碗はやわらかい赤みをさした堅手、桜の木を編んで作った枝折戸のイメージでしょうか、「桜戸」という銘がついています。貴士がこの茶碗で私に薄茶を点ててくれたのですが、濃茶にもじゅうぶん使える名碗です。

茶碗は平瀬家伝来のもので、その平瀬家は、こちらの記事でもお話ししたように、戸田家と深いご縁がある大阪の名家です。

父との思い出の茶杓、息子が新たに見つけてきた掛け物、ゆかりの旧家の茶碗などを取り合わせた、新たな始まりを祝うお茶です。

撮影/本誌・坂本正行 取材・文/福井洋子 撮影協力/高山荘華野

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