〔連載〕タサン志麻の田舎暮らし・冬 静かな里山を舞台に始まった、タサン志麻さん一家5人の古民家暮らし。豊かな自然や、旬の食材をふんだんに使ったレシピとともに、志麻さんの視点でお届けします。
・
連載「タサン志麻の田舎暮らし」の記事一覧はこちらから>>
寒い日はチーズ料理や野趣溢れるジビエを
文・タサン志麻
今年も寒い冬がやってきました。私は寒いのが苦手なのですが、ストーブのにおいにほっこりとして、なんだか温かい気持ちになります。毎日の夕食も温かい料理が多くなります。フランスの温かい料理といえば、ポトフやシチューのほかにチーズ料理が欠かせません。
チーズ大国フランスには、たくさんのチーズ料理がありますが、特に私たち家族が大好きなのはラクレットです。最近はスーパーでもラクレットチーズをよく見かけるようになりましたが、ラクレットグリルを購入するまでは、フランスに帰ったときのお楽しみでした。
寸胴で大量にゆでたじゃがいもをドーンとテーブルに置いて、野菜やハムや生ハムを大皿に盛りつけ、おのおのがチーズを焼きながらお皿によそった具材にかけてあつあつをほおばります。
初めて目にしたときはなんてシンプルな料理なんだろうと衝撃を受けましたが、実際に食べてみるとイメージががらりと変わりました。少しずつ溶けていくチーズを眺めながらおしゃべりを楽しみ、好みの野菜やハムに自分の好きな加減でとろりと溶かしたチーズをからめると、心と体が温まるだけでなく、準備も簡単で誰もが幸せ。
そんなラクレットを毎冬食べて育った子供たちもいつしか大好物になり、今では職人のように(!)チーズの焼き加減を見張ってくれています。
冬になると週に一度は家族でラクレットグリルを囲むのが定番。「子どもたちがチーズを溶かしてそれぞれのお皿に配ってくれるのも楽しみ」と志麻さん。作り方は次回ご紹介。
そしてもうひとつの冬料理はジビエです。田舎に引っ越してから、ジビエがぐっと身近に感じられるようになりました。いのしし、鹿、時にはアライグマなど、あちらこちらからいただく機会が増えました。
獲ってすぐに処理した新鮮なジビエは臭みもなくやわらかでバーベキューはもちろん、ふだんの食事に用いることも増え、命のありがたさをかみしめています。
ジビエは個性がはっきりしているので、赤ワインやスパイスなど特有の風味やアクセントになるものと相性がよく、レストランで調理していたときを懐かしく思いながら料理しています。
ご近所の畑で、夫・ロマンさんのリクエストで育てられたマーシュをたっぷり収穫。「穫れたての野菜のおいしさにいつも驚かされます」。
そんな料理が並ぶ食卓には、いつも野菜作りを教えてくださるご近所の畑で穫れた野菜があります。今回もフランスではおなじみのマーシュがたくさん収穫でき、フランスらしいひと皿に仕上げました。
チーズもジビエもあまりなじみがないかもしれませんが、楽しんでいただけたらうれしいです。
タサン志麻(タサン・しま)料理人と家政婦の経験で培った、技やセンスが光るレシピが大好評。2023年、古民家を購入して夫のロマンさんとリノベーションに奮闘中。3人の子どもの母。
(次回に続く。
この連載の記事一覧はこちらから>>)