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世界を虜にした「前衛芸術家」草間彌生にとっての“花”とは?

2025.02.17

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〔特集〕世界を虜にした「前衛芸術家」 草間彌生と花 世界各地で大規模な展覧会が開かれ、その動向が常に世界から注目されている前衛芸術家の草間彌生さん。草間さんといえば、ポップな水玉が代名詞。今号の表紙を飾る草間さんの立体作品もまた水玉に彩られています。と同時に、モチーフとしての花も、草間作品に欠かせない存在です。創造の原点は故郷・松本市の花畑にあります。平坦ではなかったここまでの道程。病と歩み、ひたむきすぎる努力の果てに到達した孤高の存在、草間彌生の花と人生に迫ります。

・特集「草間彌生と花」の記事一覧はこちらから>>

前衛芸術家 草間 彌生
1929年長野県松本市の種苗問屋の末娘として生まれる。10歳頃から絵を描き始め、幻視を体験。京都市立美術工芸学校に進学、卒業後松本に戻る。1957年に渡米。ニューヨークでネット・ペインティング、ソフト・スカルプチュア、鏡や電飾を使ったインスタレーションやハプニングなどで活躍し帰国。1987年北九州市立美術館、1989年ニューヨークの国際芸術センターでの回顧展を機に世界的に再評価の動きが起こり、MoMA、テート・モダン、ポンピドゥ―・センター、M+をはじめとした世界各地の美術館で大規模な展覧会を開催、作品も所蔵されている。

花に思いを込めて

自分で選んだダリアの花を抱える草間彌生さん。10歳頃に写真館で撮影された。カメラに向けられた目は、凜とした眼差しにも、どこか悲しげな眼差しにも見える。

自分で選んだダリアの花を抱える草間彌生さん。10歳頃に写真館で撮影された。カメラに向けられた目は、凜とした眼差しにも、どこか悲しげな眼差しにも見える。

草間彌生さんの作品には、具象・抽象、絵画・立体にかかわらず花や植物をモチーフとしたものが数多くあります。


長野県松本市の種苗業を営む旧家に生まれた草間さんにとって草花は常に身近な存在でした。

版画(シルクスクリーン)作品には花を具象的に描いたものも多い。《FLOWERS B》(2005)

版画(シルクスクリーン)作品には花を具象的に描いたものも多い。《FLOWERS B》(2005)©YAYOI KUSAMA

《花と蝶》(1989)

《花と蝶》(1989)©YAYOI KUSAMA

《夜の花》(2003)

《夜の花》(2003)©YAYOI KUSAMA

画帳を携え花畑に行き、大好きな絵を描く時間。そんな少女期へと、草間さんは人生を巡り巡って還ろうとしているのかのようです。

《花(2)》(1999)

《花(2)》(1999)©YAYOI KUSAMA

《ひまわり》(1989)

《ひまわり》(1989)©YAYOI KUSAMA

さくらの花(2006年)

《ふるさとへ帰りたい》(2016)ピンクの水玉は故郷松本で幼少時に見た桜だろうか。水色は幼い頃に遊んだ川の流れかもしれない。

《ふるさとへ帰りたい》(2016)ピンクの水玉は故郷松本で幼少時に見た桜だろうか。水色は幼い頃に遊んだ川の流れかもしれない。©YAYOI KUSAMA

さくらの花を食べたい
花の桃色にキスもしたい
私の青春に散りしだいた
宇宙にまでも届く香りを
思い出して、
涙をこぼしている今、
私のほのかなる恋の道筋に
花びらをまき散らして、
私は死をいつか迎えるだろう
そんな日が来たら
私の人生の来し方の
すべての愛をもって、
命を包んでしまう
その時に決まって
さくらの花道が
私のすべてを
包んでしまうだろう
さくら、さくら、さくら
私の生と死を
まさぐってくれる
さくらよ、ありがとう

増殖する赤い花に囲まれて

《フラワー・オブセッション》(2017)来館者は真っ白な空間に赤いガーベラと花のステッカーを自由に貼っていく。開催期間中に部屋は花で覆われて徐々に消えていく。草間彌生が幼い頃に経験した、赤い花が増殖する幻視をテーマにしている。2017年のNGVトリエンナーレで初めて発表され、今回の展覧会でも出品されている。写真/ Eugene Hyland NGV ©YAYOI KUSAMA

《フラワー・オブセッション》(2017)来館者は真っ白な空間に赤いガーベラと花のステッカーを自由に貼っていく。開催期間中に部屋は花で覆われて徐々に消えていく。草間彌生が幼い頃に経験した、赤い花が増殖する幻視をテーマにしている。2017年のNGVトリエンナーレで初めて発表され、今回の展覧会でも出品されている。写真/ Eugene Hyland NGV ©YAYOI KUSAMA

ある日、机の上の赤い花模様のテーブル・クロスを見た後、目を天井に移すと、一面に、窓ガラスにも柱にも同じ赤い花の形が張りついている。

部屋じゅう、身体(からだ)じゅう、全宇宙が赤い花の形で埋めつくされて、ついに私は消滅してしまう。

そして、永遠の時の無限と、空間の絶対の中に、私は回帰し、還元されてしまう。これは幻でなく現実なのだ。──『草間彌生自伝 無限の網』より

無限の宇宙に咲く銀河

《無限の鏡の間─かがやく光に心が一杯 》(2024)鏡に囲まれたミラールームの新作。無数の銀河がちらばる宇宙空間に放り込まれたような感覚。色とりどりの光が花畑のように広がる。写真/ Sean Fennessy NGV ©YAYOI KUSAMA

《無限の鏡の間─かがやく光に心が一杯 》(2024)鏡に囲まれたミラールームの新作。無数の銀河がちらばる宇宙空間に放り込まれたような感覚。色とりどりの光が花畑のように広がる。写真/ Sean Fennessy NGV ©YAYOI KUSAMA

写真/ Sean Fennessy NGV ©YAYOI KUSAMA

《ナルシスの庭》(1966/2024)1400個のステンレス製のボールで構成。今回の展覧会のために制作されたピンクと水玉の作品《無題》(2024)の正面は、水が流れるウォーターウォールになっている。写真/ Sean Fennessy NGV ©YAYOI KUSAMA

写真/ Sean Fennessy NGV ©YAYOI KUSAMA

《無限の中にうずもれた水玉の希望は限りなく宇宙を覆う》(2019)巨大な菌糸の森に迷い込んだかのような、バルーンの水玉作品のインスタレーション。一つ一つの水玉は個人を表し、数多くの水玉は宇宙を示す。写真/ Sean Fennessy NGV ©YAYOI KUSAMA

写真/ Sean Fennessy NGV ©YAYOI KUSAMA

《愛が呼んでいる》(2013)天井と床から伸びる生物的なオブジェはゆっくり色が移り変わる。草間彌生の詩「落涙の居城に住みて」(2010)の本人による朗読が流れる。写真/ Sean Fennessy NGV ©YAYOI KUSAMA

写真/ Sean Fennessy NGV ©YAYOI KUSAMA

《チューリップに愛をこめて、永遠に祈る》(2013)真っ白なチューリップと壁一面を覆ったカラフルな水玉。水玉の効果によって壁もチューリップも同化し、自己消滅する。写真/ Sean Fennessy NGV ©YAYOI KUSAMA



(次回へ続く。この特集の記事一覧はこちらから>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年03月号

家庭画報 2025年03月号

取材・構成・文/三宅 暁(編輯舎) 協力/一般財団法人草間彌生記念芸術財団

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