連載「千年の文様の教え」
3月「桜」
選・文=八條忠基(「綺陽装束研究所」主宰)春の盛りに山を美しく彩るように咲き誇る桜。それは春の喜びを天・地・人が分かち合うかのごとき、心躍る光景です。
桜立涌錦(さくらたてわくにしき)

散桜花(ちりおうか)
内裏・紫宸殿(ししんでん)の前に植栽された「左近の桜」は有名ですが、平安時代初期は「左近の梅」でした。それが仁明(にんみょう)天皇の承和年間(9世紀前半)に桜に植え替えられたとされます。舶来の梅と異なり、日本自生の桜は国風文化の象徴にもなり、『万葉集』では梅の後塵を拝していた桜が『古今和歌集』では逆転し、平安時代中期から「花」といえば桜を意味するようになりました。
桜立涌(さくらたてわく)

枝桜(えだざくら)
当時の桜は山桜が一般的で、花とともに赤い若葉も賞美されました。そのため桜の文様は花と葉が描かれたものも多く見られます。
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