〔特集〕歴史と希望の物語を伝える「学び舎の桜」 毎年春になると、子どもたちの成長を祝福するかのように開花する学び舎の桜。ひときわ美しく咲き誇る花は、長年木々が大切に守られてきた証です。学び舎の桜は、いつ誰がどのような想いで植えたのでしょうか。5校の桜の歴史と物語に迫ります。
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上智大学【東京・紀尾井町】

卒業式を終えた後、裏手にあるホテルニューオータニなどに荷物を置いて袴を脱ぎ、振袖姿になってお祝いの食事に向かう卒業生の姿も。学生時代最後の思い出を作る大切な時間。 振袖/彩琳 帯/服部織物 袴(写真右ページ上)/服部商店ときね 帯揚げ/和小物さくら 帯締め/道明 履物/銀座ぜん屋本店 髪飾り/かづら清老舗 ヘア&メイク・着付け/瑳峨直美 きものコーディネート/相澤慶子
卒業生が願いを込めて植えた土手の桜
日本最古のカトリック大学である上智大学は、四ツ谷駅を出てすぐ、迎賓館赤坂離宮から程近いところにあります。
レンガが印象的な1号館の前にある正門を飾るのは、校章の「羽ばたく鷲」。
1932年に竣工した1号館は、ドイツ、オランダなどのカトリック教会や学校からの募金を建築資金に、スイス人建築家のマックス・ヒンデルが手がけたドイツ風の学校建築。2024年6月に東京都選定歴史的建造物に選定。
大学キャンパスに沿ってホテルニューオータニまで続く眞田濠の土手の桜並木は、東京の桜の名所として知られていますが、その桜を植えたのは実は上智大学の学生でした。1960年卒業で空手部主将だった佐竹章夫さんです。
当時殺風景だったという土手を「にぎやかにしたい、部員たちと花見宴会をしたい、そして青春の思い出を残してくれた大学への感謝を伝えたい」という思いから、衣服を質屋に出すなどして資金を工面し、60本の苗木を購入。部員5、6人と新宿の花店から苗木を担いで運び植樹しました。
そのうちの22本が無事に育ち花を咲かせるようになり、佐竹さんの願いのとおりに、今では学生たちが昼休みにランチをしたりサークルの集会を行ったりする、春の集いの場となっています。
2013年には創立100周年を記念して、佐竹さんと現役の空手部員の立ち会いのもと、樹齢50年を超えた桜の穂木を採取。新たに3本の苗木が校内に植樹され、成長が見守られています。
神の叡智、最上の叡智を意味する「上智」大学が掲げるカトリックの教育精神“For Others, With Others(他者のために、他者とともに)”が、この美しい桜並木にも映し出されています。
学位記を手に1号館の廊下で記念撮影。多くの学生や保護者たちが写真を撮り合う人気のフォトスポット。
学位授与式を東京国際フォーラムで終えた後、学科の集会のために大学へ戻ってきて落ち合った学友2人。
(次回へ続く。
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