〔特集〕コーディネート拝見から心躍るアイテムまで 春爛漫の器あそび うららかな陽気とともに、テーブルを彩る器でも思いきり春を楽しんでみませんか。集いのシーンをセンスアップするコーディネート術、進化する名窯地への小旅行、贈り物にしたい人気作家のアイテムなど、暮らしに華やぎをもたらす器の「今」にご案内します。
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達人のテーブルから学ぶセンスアップ術
目にしただけでわくわくする、華やかな春のテーブル。多様な国籍の器、アンティークや現代作家の器を自在にコーディネートする達人たちのおもてなしのテーブルから、心を摑む演出術のヒントを学びます。
「春のピクニック」をテーマに、ヨーロッパ屈指の名窯ブランドが生み出す美しいボタニカル柄が勢揃い。
テーブルの上で旅するようにゲストをもてなす
hideyaさん(アートディレクター)
hideyaさん(ひでや)1985年生まれ。10代で単身ニューヨークに渡り、アーティストとして活動。帰国後は空間設計、プロダクトデザイン、舞台演出、映像クリエイションなどの分野で活躍。世界中の名だたるブランドのアートディレクションから、イベント制作において、トータルなブランディングを構築。
名だたる海外メゾンのイベントをトータルでプロデュースするヒデヤさんは、映画のワンシーンに迷い込んだような神秘的な空間芸術で評判のアートディレクターです。
相当の器好きとお聞きし、この度は舞台をイベントからプライベートの集いに替え、3つのテーブルシーンをご披露いただきました。次ページではそこから導き出される器づかいの極意を教わります。
プランは「春の花畑」。起点の一枚はブチェラッティのシルバーウェア(次ページで詳しくご紹介します。)
真っ白なクロスの上に設えたのは、友人と過ごすブランチの食卓で、宴は春の食材を堪能する鍋料理へ進んでいくプランです。「春の花畑」をテーマに選んだのは、何とも春らしい黄色と緑色を基調にした器の数々。銘々の敷板に目を転じると、菜の花色をしたエルメス「ソレイユ」の上に九谷焼の皿、その上にはブチェラッティのシルバーウェアが見事に調和しています。
ヒデヤさんがさまざまな国や時代の器を取り合わせる背景には、ゲストが目の前の器や料理をきっかけに異国の地へ思いを馳せたり、記憶の扉を開いたり、テーブル上の旅を楽しんでもらいたいという思いがあります。幾重にも仕組まれたもてなしの仕掛けが、ゲストの高揚感をくすぐります。
春にこそシックな取り合わせで。器談義に花が咲く(次ページで詳しくご紹介します。)
器好きが高じて現在の仕事に。
アトリエのストックルームは秘密基地
ヒデヤさんが器を集めるようになったのは、一人暮らしを始めたニューヨーク時代。お気に入りの器を取り合わせては料理を盛り、パーティを催すことが多くありました。帰国した際、それを知っていた友人が、「あなたがニューヨークでやっていたパーティって、仕事になるわよ」と声をかけてくれたのが、アートディレクターになるきっかけでした。
アトリエのストックルームには蒐集してきた膨大な数の器や、自らプロデュースしたオリジナル商品が所狭しと並んでいます。ヒデヤさんはどの器がどこにあるかをすべて正確に記憶しているだけでなく、器を手に取ると巡り合った時の記憶が鮮明に甦ってくるといいます。
アトリエのストックルームで次のイベントの構想を練るヒデヤさん。壁いっぱいの器に圧倒される。
イベントを企画する際は、お気に入りの一枚が、発想の原点になることもあります。器の景色を眺めていると、自然にテーブルのしつらいや花あしらい、香りや音楽……。想像の輪が広がって空間演出の方向性が見えてくるのだそう。ヒデヤさんにとって、器は今までの経験の引き出しであり、インスピレーションの源泉でもあるのです。
HIDEYA HOUSEの器。上左・瀬戸焼の職人が渦巻き状に手塗りした平皿。赤、黄、青の色は和洋どちらとも相性抜群。上右・薩摩焼の龍門司窯・川原竜平 作の小皿・豆皿・小鉢。土ものに金の縁取りがユニーク。下・多治見の工房で制作した急須と湯呑み。グレーの縁にも金彩。
最近では手持ちのコレクション同士を心地よくつなぐ製品を作家や職人の方々と制作し、HIDEYA HOUSEの名で販売しています。ヒデヤさんの注文はありそうでなかったものだけにベテランの作家にとっても初挑戦となったものが少なくありません。こうして難題をクリアして生まれたオリジナルは美しいだけでなく使い勝手がいいと評判。こよなく器を愛するヒデヤさんが、本当に欲しいものを形にした視座の高さが光ります。