モードに着られるのではなく
斬新さを楽しめる年齢にSacaiの特徴は、身に着けるだけで「旬」の薫りが漂うところ。フリルやプリーツなど一見甘めにも見えるディテールを複雑にミックスした、今までにない構築的なデザインが魅力です。ハンガーに掛かっているときには、「ちょっと可愛すぎるかな?」と思うようなデザインでも、着てみると印象が全く異なり、斬新なモード感が醸し出されるのです。
服だけが主張するようなモードは敬遠してきた私ですが、このジャケットを着た瞬間、「あら? なんだか新鮮! こんな私もいいじゃない?」とすんなり思えたことに自分でも驚き、若い時には躊躇していたモードが、いつの間にか似合う年齢になっていたことに嬉しくなりました。
「自分のスタイル」を進化させていく楽しみこのジャケットを手に入れたことで、「これに似合うボトムスは何だろう?」「これだったらヒールよりメンズライクなスニーカーのほうが素敵かも?」というように、それまでのおしゃれがどんどん進化していきました。知らない人から「それはどこのブランドのもの?」と聞かれることも多く、新しいブランドとの出会いを誇らしく思うことも。
実際に着てみて実感したのですが、Sacaiの服は計算し尽くされた複雑な作りだからこそ、大人が着てもチープにならず、むしろ大人の女性ならではの可愛らしさを引き立ててくれるのです。
「自分のスタイル」を確立するのは素敵なことですが、そこに安住せず、今の自分に合わせて進化していくことの楽しさを、このジャケットが教えてくれたような気がします。
おおさわ千春/Chiharu Osawa
スタイリスト
雑誌のほか、映画の衣装デザインや女優のスタイリングなどを幅広く手掛ける。着る人に合わせた的確なスタイリングやアドバイスは、多くの女優からも信頼を得ている。
撮影/大柳佳緒里 編集協力/湯澤実和子