会話はなくとも呼応できた、母・光子役の吉田 羊さん
歌川さんとしたのはたわいもない話がほとんどだったという太賀さん。しかし、母の光子役を演じる吉田 羊さんとは、ろくに話すことすらしなかったそう。
「僕個人としては、お話ししたいという気持ちはめちゃくちゃあったんですけど……。会っていない期間、羊さんが演じるお母さんを僕の中でどんどん想像していて。意識しすぎて、話しかけられないというか。何を話していいかわからないし、むしろ話さなくてもいいかもしれないとも思うようになったんですよね」
そして、恐らく同じ気概で現場に入っていた吉田さんと「お互い、とてもいい緊張感を持ちながら演じられたと思っていますし、その緊張があったからこそ、カメラの前で役として不器用ながら向き合えたような気がしています」と語り、「それがすごく印象深いですね」と付け加えました。
同様に、友人たちとの海でのシーンもまた太賀さんに強い印象を残したようで、「人生の中で何かを更新した瞬間、その感動で今まで抑圧していたものが一気に吹き出るような何かを表現したくて。それはすごく意識した記憶があります」。また、その場面のカナ(秋月三佳)の言葉も、「すごく感動しました。女友達だから言える言葉だと思いますし、母性のすごさみたいなものをすごく感じて。きっとタイジはそれを求めていたし、一番言って欲しかった言葉の一つのような気がします」。
吉田さんとは、本作の取材時にほぼ初めてきちんと話したといい、「“は! 羊さん!!”みたいな(笑)。そういう喜びがありました」。