文字を見る、原作者たちを見る。それだけで芯が通る
本作の撮影は、宮川サトシさんの出身地・岐阜県で行われました。宿泊先で安田さんは毎日、手紙を書く練習をしていたそう。この手紙は、物語に登場するものですが、安田さんにとって、文字が本作の芯を定めてくれていたといいます。
「シリアスなテーマでも一つ芯が通っちゃえば、わざわざ涙を流さなくても、面白い会話をしていても、たわいのないことをしていても全然大丈夫というか。今回は、とにかく文字ですね。宮川さんが書かれた文字、宮川さんのお母様が残した母子手帳に書かれている文字、お母様が書いた手紙……。それを見れば芯が通る。通らざるを得ないです」
葬儀場での撮影の際には、宮川さんと妻の真里さん、娘さんもいらっしゃったとか。でも、宮川さんご本人よりは、兄の祐一さんに「そのときどうでした?とか、いろいろ話を聞いたかもしれない」と安田さん。なぜなら、文字から受ける芯に匹敵するものがあったから。
「宮川さんの生まれ故郷で撮っていて、実際に葬儀場に行って、そこに宮川さんがいて、宮川さんの奥さんと娘さんがいらっしゃって。で、手をつないで歩いているのを見る。話さなくても、もうそれで十分なんですよ。その後の宮川さんがそこにいるから。それだけでもう……。あとは今の自分を、さらけ出すしかないんです」
母と息子の物語にちなみ、安田さんのお母様との話も。「僕はともかく甘えてますね。まめに連絡しなくたって別にいいじゃねぇかとか」