6.「老化と死」が前提にある生き方
『幸福寿命』とは
人生百年時代を迎え、「死ぬまでずっと幸せでいる」ことが私たちの生きる目標に。この究極の願いを叶えるためのカギとなるのが「腸内細菌」、「ミトコンドリア」、「ホルモン」だ。そのメカニズムを解き明かすとともに、これらの活性化を促し幸福寿命へと誘う生活習慣を提案する。伊藤 人生百年時代が到来し健康寿命の延伸が声高に叫ばれる中、元気な人をいつまでも元気にしておくこと―つまり今の医療からもう一歩踏み込んだ「ポジティブ医療」が本当に可能かどうかを、少し立ち止まって考えなければならないとも思うのです。
山田 最近読んだ『ホモ・デウス』にも似たようなことが書かれていました。人類は幸福を追求した挙げ句に遺伝子レベルの介入を始め、超人が生まれて想像を絶する格差社会が出現するというストーリーでしたが、不老不死は遠い未来、現実のものとして想定される世界なのかもしれません。
伊藤 最初の話題に戻ってしまうのですが、やはり人間は個体として有限であることに意味があると思うのです。錯覚かもしれないけれど、自分の個体は不可分なもので自分が支配していると思いたい。
それゆえに人は老化も死も受け容れなくてはなりませんが、このプロセスがあるからこそ人生においてのワクワク感に満ちた幸せが存在している。
山田 ええ。これまで人間は老化や死を大前提に進化してきた生物なので、この部分を簡単に外してはいけないという気はしています。ある意味、恐ろしい世界が出現する。
伊藤 我々は好むと好まざるとにかかわらず、今後「ポジティブ医療」の中に取り込まれていく可能性が大いにあります。そのとき“生きる”ということをどう選択するのか。
山田 これまで以上に“生きる”ことと向き合わねばならない時代になりそうですね。
作家 山田 宗樹先生特集「幸福寿命」、この対談の続きは2019年5月8日配信予定です。 〔特集〕人生百年時代を迎えて“生きる”を問う「幸福寿命」
撮影/八田政玄 田中 雅 本誌・西山 航(静物) 取材・文/渡辺千鶴 撮影協力/ホテルニューオータニ博多
「家庭画報」2019年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。