主演ドラマの大ヒットを機に、アジア、特に中国では絶大な人気を誇る。――原作は、阪神淡路大震災のニュースを見た人達の心の中で何が起こったのか?をテーマにした短編集。以前からご存じでしたか?
「いえ、もともとあまり小説を読むタイプではないので、今回の舞台が決まって初めて読みました。すごく比喩表現が多い印象で、どこまで深読みすればいいのかな?と思いました」
――今回の舞台版の台本は、短編集から『かえるくん、東京を救う』と『蜂蜜パイ』の2作品を取り上げて、ひとつに編み上げたような形になっているとか?
「はい。なので、最初に読んだ印象は小説とは少し違ったんですが、やっぱり思ったのは、どこまで深読みして、どう捉えたらいいのか?ということ。単に話だけ追うと、僕が演じる淳平が、松井玲奈さん演じる大学時代からの友人・小夜子に思いを寄せていて、でも伝えられなくて……というシンプルな物語なんですが、一度深読みし始めると、“ここはこうとも受け取れるな”とか“ここはこういう意味かもしれない”と思うところがたくさん出てきます。それで、演出家の倉持(裕)さんと最初にお会いしたときに、聞いてみたんです。この舞台に臨む上での共通認識として、どう捉えたらいいですか?って」
――倉持さんは、何と?
「“そこは稽古で”と言われました(笑)。なので今日は、あくまでも僕がこうかなあと思っていることしか話せないです(笑)。落ち着いた印象の倉持さんは、どういうふうに稽古を進めていくんだろう?とか、前に倉持さんの舞台を観たときに印象的だった不思議な設定やコミカルな要素は、今回の舞台の演出にもあるのかな?とか、いろいろ楽しみです」
――英語も堪能な古川さん。英国の劇作家マーティン・マクドナーの作品『イニシュマン島のビリー』(2016年)や、日英合作の舞台『家康と按針』(2012年)に出演された際は、英語の台本も読まれていたとか。
「英語と日本語の表現では意味合いが違う部分があったりするので、和訳前の台本も用意していただいて、演出家に確認するようにしていました。あ、でも今回は、まだそこまでできていません。倉持さんと同じく、僕も“そこは稽古で”ということで(笑)。原作が日本の作家さんの小説なので、大丈夫かもしれませんけどね」
――古川さんご自身には、阪神淡路大震災にまつわる記憶が何かありますか?
「その頃はちょうどカナダにいたので、わからないんです。まだ小さかったので、日本にいたとしても、よくわかっていなかったかもしれません。同じ震災でも、実際にそこで被災した人、国内でニュースを見ていた人、僕みたいに日本人だけど海外にいた人……と、当たり前ですけど、感じ方や捉え方は人によって違うのではないかと思います。最近は特にあちこちで大きな災害が起きているので、震災と聞いたときに思い浮かべることも、人によってさらに違ってきている気がします」