目新しいことにチャレンジしないと映画を作っている気がしない
商業映画の監督デビューから30年以上。そんな中、本作で視点を限定するという初挑戦をした黒沢監督は、「毎回何か一つくらい、新しいことにチャレンジしているつもり」だといいます。
「いつも東京近郊で撮っていると、新しいことをやっているといっても、何か似てきちゃうんでしょうけど、今回はたまたまウズベキスタンという国と制約がなかったことから、様々な新しいことが重なり合ったので、今まで以上に新しく見えるのかなと思いました。いくつになっても何年やっていても、何か新しいことを。失敗してもいいから、何か目新しいことに次々チャレンジしていかないと、映画を作っている気がしないタイプなんでしょうね(笑)」
大成功を収めた作品が1本あれば、「それと同じことをやっていれば安心という気持ちもわかります。これをやってすべてがうまくいったという経験があれば、そうなるでしょうけど……」。続いて、驚きの言葉が出てきました。「いつか大成功作を撮りたいという夢はあるんですけど、毎回失敗するので」。毎回失敗!?
「毎回失敗しますね。作ったときは、これで大成功だと思うんですよ。ただ、少し時間が経つと、“あれ? やっぱりもうちょっとこうしたほうがよかった”とか、“思ったほど受け入れられなかった”とか。なんらかの失敗はつきまとうんです。だから、次は新しいことをやらないと成功に近づけないという思いがあるんだと思います。でも、この年まで失敗を続けてくると、慣れる。失敗しても動じなくなりますし、失敗して当たり前、失敗こそが創造というと大袈裟かな」
挑戦の先に成功があるとは限らず、年齢や経験を重ねると、新しいことに手を出すには勇気が必要。それを黒沢監督は軽々と超える。