今季のプログラムは、髙橋大輔選手の「道」や鈴木明子さんの「O(シルク・ドゥ・ソレイユ)」などの振付で知られるパスカーレ・カメレンゴさんに依頼。端正な演技力にも磨きをかけています。NHK杯でどんな演技を見せてくれるか、楽しみです。山本草太選手
(SP「エデンの東」75.05点1位、FS「in This Shirt」138.79点3位、合計213.84点2位)
そんななか、まずショートプログラム(SP)で1位につけたのは山本草太選手。今季はSP、FSともにパスカール・カメレンゴさんに振付を依頼し、アメリカ・デトロイトでその踊り心を体感して来ました。
9月のUSインターナショナルクラッシクでフリースケーティング(FS)とトータルスコアのパーソナルベストを出し、10月半ばに行われたフィンランディア杯でも、SPでは宇野昌磨選手を上回る得点を叩き出すなど、好調さを感じさせていた山本選手。西日本でも75.05点を獲得して中村 優選手、本田太一選手をかわし、トップに立ちました。
しかし、SP後の囲み取材では「ジャンプの調子が落ちている実感はあって……。感覚はだいぶ戻って来ましたが、決める意識を持って挑んでいきたい。やっぱり4回転ジャンプはめちゃくちゃ難しいので(それを軽々跳べる)トップの人たちはすごいな、と思います(苦笑)。自分もそうならなければ、と思っています」と、ジャンプに少し苦戦していることを明かした山本選手。FSではその危惧が的中し、冒頭の4回転サルコウで転倒。トリプルアクセルでも転倒するなど伸び悩み、FS3位、総合2位と優勝を飾ることはできませんでした。
でも、山本選手はまだまだここからです。現状に甘んじることなく、上を目指すが故にぶつかっている壁ですから。
幼い頃から頭角を現した山本選手は、宇野選手、ネイサン・チェン選手とジュニアグランプリファイナルや世界ジュニア選手権を競いあい、いずれは羽生結弦選手の下の世代として日本を牽引していくスケーターの1人になるに違いないと誰もが思っていた存在でした。2度に及ぶ足首の骨折と3度の手術でスケート靴さえ履けない日々の、どれほど長かったことか。辞めてしまう選択もあったかもしれない中で、手術やリハビリの苦しみ、心の葛藤を経て、リンクに戻って来てくれた山本選手の演技にはやはり胸を打つ力があります。
回り道だったかもしれませんが、一番辛かった時期は過ぎたはず。あとはここから更なる進化を目指して、気持ちのこもった美しい演技をNHK杯、全日本選手権で見せてほしいです。