親のようだけれども親ではない。その距離感が大切だった
泰利は、寮生たちを一番近くで見守り、手助けし、導く大人です。それは、子供たちの親のようでいて、でも親ではなく。緒形さんはその距離感が「ものすごく大切になってくる」と言い、「いつも頭に入れていました」。
「春から撮影がスタートしましたけど、ほとんど順撮りだったので、春さえうまく軌道に乗れば、という思いでいましたし、距離感というものを特に大切にしていました。2週間の春編の撮影が終わって、そのあと夏編まで時間が空くんですけれども、その間に(もみの家のOB・淳平役の)中村 蒼くんと別の作品で一緒になって。そのときに、春編を振り返って、“泰利さんは、ものすごくどっしりしていて大きく感じた”って蒼くんが言ってくれたんです。それで、“よし、このままいけるな”と思いましたね」
そのうえで、緒形さんはセリフを「押し付けがましくなく、自然に彼ら彼女らが受け入れられるように」意識していたと言います。
「彼らの中に言葉を染み込ませていきたいなと思って。彼らに信頼してもらえるか、次の一歩を踏み出せるきっかけを与えなくちゃいけないけれども、与えすぎてもいけない。待つことや見守ることは、教え導くより難しいんだというようなことを頭に置きながら、セリフなんだけどセリフであってはいけない、と。そういう方向ですね、演技プランとしては」
富山県で1年かけて撮影された本作。「風を感じながら、その季節ならではのことができるのはすごく贅沢だし、すごくありがたいこと」