――向井さんご自身は、嘘をつくのは得意なほうですか?
「得意じゃないです。というか、嘘をつくこと自体、ないですね。家では、今日何があったとか、聞かれてもいないのに全部しゃべりますから(笑)」
――子供の頃からそんな習慣が?
「いえ、そんなことはないです。でも、大きな嘘はついたことがないですね。仕事では嘘の世界を生きているので、素のときまで嘘をつくのが面倒なんだと思います」
――では、虚構の世界を演じて見せる俳優という仕事のどこに最も魅力を感じていますか?
「舞台に関して言えば、やっぱり嘘の世界を作っていく作業ですね。作りたい世界も、演出の仕方も、照明や音楽、舞台装置の使い方も、演出家さんによって違うので、面白いです。それをどんな方がどんなふうに観てくださっているのかが、その場でわかって、日によっても土地によってもリアクションが違うところも舞台ならでは。なるべくなら年に1本はやりたいなと思っています」
すらりとした長身と、持て余し気味に見えるほど長い手足が印象的。飾り気のない言葉に実直な人柄を感じる。