ハイクレア城に暮らす ドラマ『ダウントン・アビー』で一躍脚光を浴びた英国ハイクレア城。その城に今も住む第8代カナーヴォン伯爵家の人びとのライフスタイルを、英国フリーライター山形優子フットマンが取材。貴族の暮らしに息づく英国文化をご紹介します。水曜更新。
(今までの連載はこちら) 伯爵家のおもてなしの舞台裏に密着!
3月――毎年この時期になると、ハイクレア城では敷地の一角に広がる緑の牧場で、生まれたての真っ白な仔羊たちがピョンピョンと跳ね回る様子が見られます。冬の寒さがほんの少し和らぎ、春が訪れる嬉しさと期待に胸が膨らみます。
ドラマ『ダウントン・アビー』のロケ地としても知られるこの城は、一般来場者も見学できますが、冬の間はお休み(もちろん伯爵家はいつもと同じように暮らしていますが)。
それが例年復活祭の前後、今年は3月31日に正式オープンします。春は、ハイクレア城の閉ざされていた門が再び開け放たれる時季でもあるのです。
春になると、城の牧場では、愛らしい仔羊の姿が。伯爵家が主催するパーティは年に6回のみ
さて、今回は、ハイクレア城のパーティについてお届けしましょう。
イギリスの黄金期であるヴィクトリア朝時代のハイクレア城は、英国貴族の華やかな社交場でした。ことに5代伯爵アルミーナ夫人はロスチャイルド家の持参金の力で、王室の面々を城に招待し社交の花形として常に脚光を浴びていました。
そして今、現8代伯爵とレディ・フィオーナが主催する私的なパーティは年に6回。意外に少ないと思われるかもしれません。
「ハイクレア城は一般にも開放しているので、ハイシーズンになると毎週末、結婚式やイベントがあり、スタッフも私も大忙しです。休みなしでは彼らが気の毒なので、自分達の私的なパーティはできるだけ控えめしています」と、伯爵夫人はその理由を語ります。
かつての城主や夫人は、こんなふうに城が一般公開されるなど考えも及ばなかったことでしょうね。