確かな演技力で存在感を示す俳優・緒形直人さん。本作においては、坂本欣弘監督が「時間をかけて役に向き合ってくださった」と感謝。演じる役の背景を心の中で埋めて撮影に臨む
人生に立ち止まったときに次の一歩を踏み出すのが怖くなったり、気持ちを伝えたいのにうまく言葉にできなかったり。そうして身動きが取れなくなってしまったこと、ありませんか? 映画『もみの家』は、そんな若者たちを受け入れる自立支援施設・もみの家にやってきた16歳の彩花が、地元の人々との出会いや豊かな自然の中で成長していく姿を描きます。
彩花(南 沙良)を笑顔で受け入れる、もみの家の主宰者・泰利を演じるのは、緒形直人さん。メガホンを取った坂本欣弘監督いわく、泰利は「寮生を導く人であり、一家を支える大黒柱。ここで間違えれば、全体がブレるくらい重要な役でした」。その重要な役を演じるにあたり、緒形さんは泰利の背景を考えたそう。
「泰利は、学生時代から教師を目指していて、奥さん(田中美里)とはそのときに出会い、お互いに教壇に立って。あとは、その後のことも含めて自分の中で埋めてから来てくださいと監督から事前に言われていましたので、自分としては、教壇に立ってしばらくしたときに、(心の問題を抱えるもみの家の)寮生たちのような生徒に出会って、その子を救えなかった。その彼が奥さんと共に施設を作って子供たちを見守っていく生き方をしよう、と。そういうことを心の中で埋めてから撮影に臨みました」