東京都美術館(上野公園)で開催中の「マティス展」が盛況を博す中、マティスゆかりの地を巡るフォトブック『マティスを旅する』(世界文化社)が上梓されました。“色の魔術師”と称される芸術家、アンリ・マティスが暮らした場所、そこで生まれたアート、目にした景色とは──。出版を記念し、家庭画報.comでは第一章「ヴァンス・ロザリオ礼拝堂」から一部を抜粋、再構成してお届けします。記事の最後には
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色と光に満ちた、生涯の最高傑作
ヴァンス・ロザリオ礼拝堂へ
主祭壇と双子窓《生命の樹》。マティスが“生涯の最高傑作”と称したヴァンス・ロザリオ礼拝堂は、小高い丘の住宅地に建っています。
第二次世界大戦後、新たな宗教と芸術との関係を提唱する「アール・サクレ(聖なる芸術)」を実践し、ル・コルビュジエ設計の「ロンシャン礼拝堂」や「ラ・トゥーレット修道院」などを実現させたドミニコ会のクチュリエ神父が建設を決定しました。
白壁に青い屋根の建物が礼拝堂。右隣のオレンジ色の屋根がミュージアム、左隣の塔のある建物が修道院。同時期に、かつてマティスの病気療養中に介護士とモデルを務め、その後音信不通になっていたモニク=ブルジョアが、ジャック= マリー修道女となってマティスと再会します。
彼女の仲介を受けて、マティスは無償で礼拝堂のすべてを作り上げると決意しました。
袖廊側から見たファサード。屋根の上に載せられた高さ12メートルの十字架もマティスが手掛けたもの。主祭壇。右は陶板壁画《聖ドミニコ》、左は双子窓《生命の樹》。主祭壇上の磔刑像とキャンドルスタンドもマティスが制作した。聖書台の前に立つのは、ドミニコ会のマルク・ショヴォー修道士。マティスがデザインした上祭服。ショヴォー修道士が着用して見せてくださった。上祭服はカトリック教会の典礼サイクルによって6種類あり、それぞれ2着ずつを礼拝用、展示用としている。写真はエピファニー(顕現祭もしくは公現祭)に着用するもの。設計を担当したのは、ドミニコ会のルイ= ベルトラン・レシギエ修道士。
設計監修はル・コルビュジエの師であるオーギュスト・ペレが担当しましたが、マティスの意を汲み、図面を描いたのは、若きレシギエ修道士だったのです。
ミュージアムに展示されたレシギエ修道士の写真と、手描きの図面。20代後半で設計に携わり、36歳で早逝。参拝者はこうした資料や模型、マティスのデッサンなどが展示されたミュージアムを鑑賞後、礼拝堂内へ。訪ねるなら午前中がおすすめ。マティス曰く「冬の朝11時頃がとりわけ美しい」
身廊の側面に掲げられた陶板壁画《聖母子像》。正対するステンドグラスが映り込んでいる。午前中の低い陽光が、ステンドグラスの色をまとって礼拝堂を満たす。礼拝堂は、特に冬の午前中の低い光を受けると、タイル画にステンドグラスが美しく映り込み、空間全体が色と光で満たされます。
マティス自身は、「冬の朝11時頃がとりわけ美しい」と評しています。この記事に掲載されている写真の撮影も、同じタイミングで行いました。下のフォトギャラリーもぜひご覧ください。
Information
ヴァンス・ロザリオ礼拝堂
Chapelle du Rosaire de Vence 466 avenue Henri Matisse, 06140 Vence
マティスを旅する
『マティスを旅する』1760円/世界文化社作品集とも伝記とも異なる、マティスの軌跡を“旅するように”たどるフォトブック。マティス自身が“人生の最高傑作”と語るヴァンスの「ロザリオ礼拝堂」をはじめ、彼の人生の拠点となった土地や施設を巡ります。マティスが見つめた風景を通じて、“色の魔術師”と称されたマティス作品の誕生の背景、人間像に迫ります。
撮影/小野祐次 文/安藤菜穂子
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表示価格はすべて税込みです。 撮影/小野祐次 文/安藤菜穂子 この記事は、『マティスを旅する』(世界文化社)より一部を抜粋、再構成して作成しました。