〔特集〕今秋、感動の体験旅へ 京都・奈良 日本が世界に誇る2大古都、京都と奈良。世界文化遺産にも登録されている、この2つの都市の文化的価値と魅力を、料亭、庭園、建築などに焦点を当てて紐解いていきます。さらに美味処、話題のスポットの情報もお届けします。前回の記事はこちら>>
南大門をくぐると、真正面に大仏殿、「上院」と呼ばれる右手の奥まった丘陵地には法華堂や二月堂が建ち並びます。「現在の上院地区には、東大寺の前身寺院である金鐘寺(きんしょうじ)がありました。金鐘寺は中国伝来の『華厳経』を日本で学ぶ、初の拠点となった場所で、後に東大寺初代別当となる良弁僧正が、奈良時代に創建したとされています」と話すのは、現別当 橋村公英さん。
『東大寺要録』によれば、法華堂は金鐘寺の遺構。奈良時代に建てられた寄棟造の「正堂(しょうどう)」は、鎌倉時代に建造された入母屋造の「礼堂(らいどう)」とつながり、現在の形に。本来別々であった、諸仏を安置する空間(仏堂)と人が立ち入る空間(礼堂)が一つになり、本堂へと移行する原形とも目されます。
橋村さんいわく「堂内に安置された御仏は、乾漆像(木や粘土で形作った上に麻布を張り、漆で塗り固める技法)。ユーラシア大陸の古代彫像のような雰囲気を残しているのも、華厳宗伝来の地である法華堂ならではです」。その言葉に加藤さんは「1300年ほど前のものが現代まで残っていることが、すごいことです」と興味深げ。
さらに歩を進め、法華堂北側にある二月堂へ。「お水取り」こと修二会の舞台として知られる二月堂は、懸造(かけづくり)と呼ばれる斜面に突き出した独特の建築様式で、欄干からは古都奈良が一望できます。「堂が真西に向かって建っているため、お彼岸の時期には、真正面に夕日が沈み、まるで極楽浄土とつながっているような美しさです」と橋村さん。
最後に訪ねた大仏殿は「天平・鎌倉時代には桁行11 間(約88メートル)でしたが、江戸時代に3分の2ほどに規模が縮小されました。それでも高さや奥行は創建時のままで、今もって世界最大級の巨大木造建造物です」。
大仏さまは信楽の地(紫香楽宮)で造り始められ、やがて平城京に都が遷都すると、この地で造立が再開されたのだそう。加藤さんいわく「説明を聞くことで歴史を紐解き、さらに学びたくなりますね」。
東大寺(とうだいじ)
奈良市雑司町406-1
TEL:0742(22)5511
(開)【大仏殿】7時30分~17時30分(4月~10月)、8時~17時(11月~3月) 【法華堂】8時30分~16時(通年)
※次回に続く
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撮影/大泉省吾 ヘア&メイク/川代麻世〈mayostips〉取材・文/冨部志保子 参照資料/『古寺行こう(3東大寺 4興福寺 5薬師寺 10唐招提寺)』(小学館)、『奈良で学ぶ 寺院建築入門』(集英社新書)※施設・店舗は臨時休業の場合があります。事前にご確認のうえお出かけください。『家庭画報』2023年10月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。