〔特集〕今秋、感動の体験旅へ 京都・奈良 日本が世界に誇る2大古都、京都と奈良。世界文化遺産にも登録されている、この2つの都市の文化的価値と魅力を、料亭、庭園、建築などに焦点を当てて紐解いていきます。さらに美味処、話題のスポットの情報もお届けします。前回の記事はこちら>>
薬師寺東塔
【「凍れる音楽」国宝東塔は、六重の塔にあらず】創建以来約1300年間、薬師寺を見守り続けてきた東塔。裳階を含め、大小6つの屋根が重なるリズミカルな建築美により、いつしか「凍れる音楽」と称されるようになったという。なお、内部は3層になっており、三重塔である。
訪ねる人・加藤雅也さん(かとう・まさや)1963年奈良県生まれ。俳優として、幅広い役柄を通して唯一無二の存在感を放つ。2019年より奈良市観光特別大使を務め、2023年には天理市の教育・芸術スーパーバイザーに就任。奈良の魅力と奈良愛を発信し続けている。[国宝東塔落慶記念]創建1300年、解体修理を経た奇跡の白鳳仏塔建築
平城遷都以前の藤原京の時代に、天武天皇が皇后の病気平癒を願って建立を発願したとされる薬師寺。2つの塔を持つ「双塔式」の伽藍配置や建築様式にも、白鳳時代の特徴が見て取れます。
ご案内くださった副住職 生駒基達(きたつ)さんは「今春、12年に及ぶ解体修理を終えた東塔は創建当初からの建造物です。特徴の一つは屋根の軒の出方に大小2種類があることです。この小さな屋根は裳階(もこし)という飾り屋根で、ほかに類をみない特殊な塔といえます」。
「解体修理というのは、すべての部材を取り外し、組み上げたのですか」と問う加藤さんに対し、頷く生駒さん。
「今回の解体修理では、心柱(しんばしら)の腐食や礎石(そせき)の不同沈下を主な修理対象として着手しました。また、基壇(地面の上に石を組み高くした部分)の高さが変わりました。創建時の基壇を保護する形で、その上に新たに基壇を築き、1メートル以上高さを上げて、西塔や金堂と高さを揃えました」。
その後、特別公開中の東塔の中に入り、お釈迦様の生涯を表す壮大な彫刻を見た加藤さん。「創建時は木の芯に粘土を貼り付けて作られた釈迦八相像があったと聞き、驚きました。お釈迦様のお墓となる三重塔が今まで引き継がれているのはすごいこと。それだけで世界遺産としての価値を感じます」。
【白鳳期の伽藍配置が体感できる】中央に金堂(右側)を、その手前に中門(左奥)を、金堂の手前東西に2つの塔を配置する薬師寺。塔の各層につく裳階も白鳳期の特徴。
【東塔・西塔の初層内陣 特別公開中】大規模修理を終えた東塔。内部には文化勲章受章者で彫刻家の中村晋也さんが制作したお釈迦様の生涯を表した釈迦八相像が安置され、2024年1月15日まで特別公開中。
【東塔初層天井に創建当初の絵が残る】東塔の天井には、想像上の美しい花「宝相華文(ほうそうげもん)」が現存。このたびの修理を経て、その一部が鮮やかな復元品に代えられたことで、往時の彩色技法を見ることができる。
【国宝「東院堂」は日本最古の禅堂】鎌倉時代に再建された東院堂は東塔に次いで古く、禅堂としては最古。優美で繊細なご本尊の聖観世音菩薩像は、インドのグプタ王朝の影響を強く受けているとされる。
【薬師如来坐像台座に、シルクロードの痕跡】金堂内の薬師如来像の台座には、ギリシャ、ペルシャ(現イラン)、インド、中国(上段より)の文様が同居。西方の文化が薬師寺まで伝わっていたことがわかる。
薬師寺(やくしじ)
奈良市西ノ京町457
TEL:0742(33)6001
(開)8時30分~17時(拝観受付は16時30分まで)
※次回に続く
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