〔特集〕今秋、感動の体験旅へ 京都・奈良 日本が世界に誇る2大古都、京都と奈良。世界文化遺産にも登録されている、この2つの都市の文化的価値と魅力を、料亭、庭園、建築などに焦点を当てて紐解いていきます。さらに美味処、話題のスポットの情報もお届けします。前回の記事はこちら>>
猿沢池の北の高台に建つ興福寺は、日本の国づくりの礎を築いた藤原不比等(ふひと)によって710年に創建された藤原氏の氏寺。境内に3つある金堂の中心である中金堂をはじめ、不比等の菩提を弔う北円堂や三重塔など、鎌倉時代の建造物が天平文化の薫りを今に伝えています。
「なかでも北円堂は八角形の形をした珍しい建物。興福寺の建造物群の中で最も古く、創建当時は最も眺望のよかった境内の高台に建っています」と話すのは貫首の森谷英俊さん。
宝形造の屋根を太い丸柱で支えた北円堂は、軒が大きく張り出し、力強い印象。中世の建築であるにもかかわらず、古代らしさを感じさせます。一方、鎌倉時代の名建築といわれる三重塔は高さ19メートルと、興福寺の象徴である五重塔の5分の2。北円堂とほぼ同時代の建物ですが、繊細な雰囲気を漂わせているのが特徴です。
「どちらも兵火で焼け、再建された建造物。焼失と再建を繰り返しながらも先人の思いを今に伝えているのが、その魅力だと思います」。
興福寺(こうふくじ)
※次回に続く
・特集「今秋、感動の体験旅へ 京都・奈良」の記事一覧はこちら>>>この記事の掲載号
撮影/小林廉宜 取材・文/冨部志保子 参照資料/『古寺行こう(3東大寺 4興福寺 5薬師寺 10唐招提寺)』(小学館)、『奈良で学ぶ 寺院建築入門』(集英社新書) ※施設・店舗は臨時休業の場合があります。事前にご確認のうえお出かけください。『家庭画報』2023年10月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。