〔特集〕今秋、感動の体験旅へ 京都・奈良 日本が世界に誇る2大古都、京都と奈良。世界文化遺産にも登録されている、この2つの都市の文化的価値と魅力を、料亭、庭園、建築などに焦点を当てて紐解いていきます。さらに美味処、話題のスポットの情報もお届けします。前回の記事はこちら>>
平城京の守護であった春日大社は、神山御蓋山(しんざんみかさやま)の麓に位置し、古代からの人々の信仰を今に伝えます。「建物の特徴は、神山を削らずに造られていること。そのため、御本殿や回廊は神山の地形に合わせて建物を美しく歪ませ、優美で真っ直ぐに見えるように造立されています」と宮司 花山院弘匡(かさんのいんひろただ)さん。
創建は、奈良時代の768年。20年に一度の御社殿を美しくする「式年造替」はこれまで60回を数え、御蓋山を含む約30万坪が世界遺産に登録されています。さらに、名勝奈良公園は95パーセント以上が春日山を含む旧境内地です。国宝の本殿4棟は、神山の傾斜に合わせて土台が階段状になっており、他に27棟が重要文化財の建物。この風景は、鎌倉時代の作である「春日宮曼荼羅」とまったく同じ。
創建当初からの本殿は古い切妻造の形状ですが、豪華な装飾がちりばめられています。春日の神域には原生林が残り、約1200頭の「神鹿(しんろく)」と人間とが共生する、世界で唯一の場所。神山への畏怖から優美な曲線を備え、巧みに造られたのが春日大社です。
春日大社(かすがたいしゃ)
奈良市春日野町160
※次回に続く
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撮影/小林廉宜 取材・文/冨部志保子 参照資料/『宮司が語る御由緒三十話 春日大社のすべて』(中央公論新社)、『奈良で学ぶ 寺院建築入門』(集英社新書)※施設・店舗は臨時休業の場合があります。事前にご確認のうえお出かけください。『家庭画報』2023年10月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。