〔特集〕開運招福社寺と伝説を巡る 龍神絶景を行く 開運・招福につながる、龍ゆかりの寺社や聖地巡りが今ブームです。中国由来の霊獣、“龍”とは、日本人にとって、一体何なのか。龍神パワーが獲得できる“龍脈”や“龍穴”はどこにあるのか。そもそも日本の龍神信仰とは何なのか。2024年の干支、辰(龍)にゆかりの聖地を訪ね、謎多き日本の“龍文化”の実像とその不思議を紐解き、併せて2024年の開運を祈願します。
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長崎県 対馬──龍宮伝説の地へ(前編)
龍神は、農耕民には「水神」として、漁民には、「海神」として信迎されました。『古事記』の国生み神話に、本州や九州と並ぶ「大八島国(おおやしまくに)」の一つとして登場する対馬。日本の龍神信仰の源流の一つ、海神信仰の神話的景色がそこかしこに広がるこの島には、当地こそが海宮(わたづみのみや=龍宮城)だったという伝説が残り、龍神との深いつながりが今も生きています。
「龍宮の門」へと続く入江に浮かぶ海中鳥居
龍宮伝説を象徴する和多都美(わたづみ)神社の5基の鳥居。そのうち2基は海中に立ち、冬の早朝の満潮時には、幻想的な気嵐(朝霧)とともに足もとまで海に浸かった鳥居を見ることができる。「鳥居の先には龍宮の門があると信じられてきました。古代の人々は、水面に映る鳥居を見て、海の中に異界への入り口があると感じたのかもしれません」(和多都美神社 禰宜・平山さん)。
和多都美神社(長崎県対馬市)
ご本殿を見守るように「龍松」が寄り添う。
龍宮伝説のヒロイン、豊玉姫命が眠る
和多都美(わたづみ)神社の社伝によると、この神社の創建は紀元前の神武天皇の時代。海の神・豊玉彦命(トヨタマヒコノミコト)がこの地に「海宮(わたづみのみや)」と名づけた壮大な宮殿を作ったことが始まりとされ、祭神である彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト=山幸彦)と豊玉彦命の娘・豊玉姫命(トヨタマヒメノミコト)が出会った場所だといわれています。
二人の出逢いを予言した縁結びの井戸「玉ノ井」 境内にある「玉ノ井」は、豊玉姫命の侍女が水汲みをしようと井戸を覗いたところ、やがて海宮を訪れることになる彦火火出見尊(山幸彦)の顔を水面に映し出したという縁結びの井戸。家族を象徴するような三股の巨木がそびえ、神聖な気を漂わせている。
神話では、山幸彦が兄から借りた釣り針を探しに海の中にある海宮(龍宮城)に赴き、そこで出会った豊玉姫命と契りを結ぶ場面が登場しますが、その海宮の舞台が対馬であるというのが、この地に伝わる神話なのです。(次回に続く。)
拝殿横の三柱鳥居に祀られた亀甲石は、亀卜(きぼく)のための磐座と伝わる。
和多都美(わたづみ)神社対馬の中央に広がる浅茅(あそう)湾の北西岸に鎮座する神社。月に一度の大潮の満潮時には、本殿の近くまで海水が迫る。まさに自然とともにある古社である。
住所:長崎県対馬市豊玉町仁位字和宮55(対馬空港から車で約30分)
TEL:0920(58)1488
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