〔特集〕開運招福社寺と伝説を巡る 龍神絶景を行く 開運・招福につながる、龍ゆかりの寺社や聖地巡りが今ブームです。中国由来の霊獣、“龍”とは、日本人にとって、一体何なのか。龍神パワーが獲得できる“龍脈”や“龍穴”はどこにあるのか。そもそも日本の龍神信仰とは何なのか。2024年の干支、辰(龍)にゆかりの聖地を訪ね、謎多き日本の“龍文化”の実像とその不思議を紐解き、併せて2024年の開運を祈願します。
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八方睨みの龍──妙心寺(京都市右京区)
龍の眼を見つめながら昇り龍の姿を探してお堂を一周
明暦2(1656)年、「法堂」の鏡天井に狩野探幽により描かれた「雲龍図」。どこから見ても、龍と眼が合うことから“八方睨みの龍”と呼ばれる。“睨み”といっても、守護神らしいどこか優しい眼差しなのは牛のそれをモデルに描かれたものだから。角度により昇り龍の姿が現れる
古社寺の天井画“雲龍図” 龍は仏法を守護する
神社や寺院を訪れると出会うことができる多彩な龍の装飾。拝殿や本堂の欄間、襖絵、手水舎や仏具などさまざまな姿で表現されています。なかでも、禅寺の天井画の傑作は多く、その龍の絵を見るために訪れる人々が後を絶ちません。
なぜ、神仏と龍の結びつきは強いのでしょうか。龍の天井画の代表作の一つ、狩野探幽の筆が残る妙心寺を訪ね、その理由を教えていただきました。
仏教の始まりと同時に龍は登場した
「お釈迦様の誕生をたたえ、龍がその御身に甘露の雨を降らせたという伝承が多くの経典に残されています。龍は最初から仏教の守護神なのです」と語るのは、大本山妙心寺の僧侶、津田章彦さん。
龍が仏教の守護神であることは、『法華経』に伝えられています。「八大龍王」と呼ばれ、観音菩薩の守護神として、古くから人々の信仰を集めてきました。
「龍は、仏教の守護神であると同時に水を司る神としても知られているため、火事から建物を守る意味から天井画に龍が描かれるようになったとされています。とくに、私たち臨済宗を象徴する『法堂(はっとう)』という、説法を受ける建物がありますが、その建物に龍の天井画が描かれています。妙心寺のそれは、円相に龍が描かれ、周囲に雲が渦巻く図。円は禅においての悟りの世界である「無」や「空」を表したものです。手がけた狩野探幽は、この画を完成させるまで3年修行に通い、5年間かけて描きました。最後に探幽が眼を入れると、法堂の周囲に雲が立ち込め雨が降ったという逸話が残ります。私たちにとっては当たり前のようにある画ですが、年に3回、法堂で行われる修行の際には、存在を強く感じています」
法堂には、屋根の四隅を守る鬼瓦の一つにも龍が表現されています。
「南東を守る鬼瓦が龍。諸説ありますが、これも火から守る意味があったようです。ほかにも、三門の柱に龍の幼児である『飛天』が描かれています。翼が波にもまれてなくなることで龍になっていくという、悟りの世界を伝えています。仏教にとって龍が大切な存在であることがおわかりいただけるのではないでしょうか」
大本山妙心寺住所:京都府京都市右京区花園妙心寺町1
TEL:075(461)5226
(次回へ続く。
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