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なぜ“シティポップ”はぐっとくるのか? 世界から愛されるメロディメーカー林哲司さんの音楽

2024.01.11

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今、世代を超えて世界が夢中 ときめく!昭和レトロの魅力 1926年から89年までと長く続いた昭和の時代。特に70年代、80年代のカルチャーが、1997年から2012年に生まれたZ世代には、今、魅力的に映っているといわれます。特集前半ではノスタルジーとポップさが渾然一体となった昭和レトロの作品やアイテムを、後半ではシティポップの魅力をたっぷりお届けします。前回の記事はこちら>>

なぜ“シティポップ”は、ぐっとくるのか?

海外のリスナーたちがSNSやYouTubeで拡散し、今や世界から“シティポップ”というカテゴリーで愛される、1970年代後半から80年代に日本で生まれた名曲の数々。

なぜこんなにも心を揺さぶられるのか。日本を代表するメロディメーカー・林 哲司さん、音楽評論家の柴崎祐二さんのお話からその理由が見えてきました。

林 哲司さんいわく、「世界で今“シティポップ”と捉えられているのは主に、1970年代後半から80年代、テニスやサーフィンといった西海岸の伸び伸びとした文化が入ってきた頃作られた曲。僕も含めた若い音楽関係者たちが欧米で人気の音楽エッセンスを吸収しつつ、新たな日本の曲、歌を作り出していた時代でした」。

「記憶の琴線に触れる、哀愁のメロディとフレーズが鍵」林 哲司さん(作曲家)インタビュー

2023年11月5日に行われた「ザ・シティ・ポップ・クロニクル 林哲司の世界 in コンサート」。大盛況のうちに幕を閉じた。林さんはその時間を振り返り、「こんなに素晴らしいアーティスト&ミュージシャンに、記念コンサートを祝っていただいたことをとても幸せに感じています」と語る。写真はデビュー45周年コンサートから。

世界から愛されるメロディメーカーのレジェンド

──デビュー50周年おめでとうございます。歌手として作曲家としての50年を振り返られて、今どのようなお気持ちでしょうか。


林 哲司さん(以下H) 月並みではありますが、長いような短いような50年でした。この間に作ったのは約2000曲ほど。皆さんがご存じの曲は「真夜中のドア〜stay with me」「SEPTEMBER」など、だいたい20曲くらいでしょうか。わずか1パーセントほどではありますが、それらの曲を今も皆さんに愛していただけていることは作家冥利に尽きますね。

──世代や国境、時代を超えて歌い継がれている現状をいかが思われますか?

H リアルタイムで聴いてくださったかたもいらっしゃると思いますが、ここまでの世界的な広がりはやはりシティポップブームがあってこそだろうと。当時シティポップだと思って作っていたわけではないですが、海外からの注目がムーブメントの始まりだったのでとても不思議な気持ちがしました。同時に、いろいろな出来事が重なり、作ってきた曲の数々が自分の50周年のタイミングで、こんなにも愛されている現状は、ドラマを超えたドラマ、まるで奇跡のようだなと感じてもいます。今までの歌謡曲とは異なる曲を生み出したいとの想いから、“大衆性と音楽性”を密着させ“POP×ART”の発想で曲を作り続けてきました。昨今の反響で、その信念は間違いではなかったと実感できたのは、嬉しいことでした。

海外リスナーから火がつき、信じられない再生回数に

──海外や若者たちからの熱量を認識されたのはいつくらいですか?

H 4〜5年前でしょうか。僕はネットサーフィンなどをあまりしないタイプなので、当初まったく知らなかったのですが、バンドメンバーから「YouTubeやTikTokで、松原みきさんの『真夜中のドア〜stay with me』の再生回数が凄いことになっている!」と教えてもらって。あまりに信じられない事態となっていたので最初は正直、脳内が疑問符だらけでした(笑)。

──なぜ、こんなにもシティポップが愛されるのだと思われますか?

H 海外のかたたちが70〜80年代の楽曲に今、心惹かれる理由を音楽家として分析してみたのですが、僕が思うに、鍵を握るのはまずはメロディなのではないかと。言葉がわからなくても心を揺さぶられたり、涙するということは、メロディにおける日本独自の哀愁感が海外では目新しくて琴線に触れるのだろうと考えています。海外のDJからも「母国の音楽とはまた違う、新しさと懐かしさが渾然一体となっていて、すっと心の中に入ってきた」といわれました。

──50周年記念の「ザ・シティ・ポップ・クロニクル・イン・コンサート」やアルバム6枚発売など企画が目白押しでした。音楽活動への想いをお聞かせください。

H 恵まれた音楽環境にはもちろん感謝していますが、静かな生活に憧れている自分もいます(笑)。50年やってきましたから。この先、自分の作品で全編を彩るミュージカルなどを、ロングタームで仕上げていけたら嬉しいですね。

撮影/鍋島徳恭 構成・取材・文/小松庸子

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