今夏、箱根・仙石原に開業した「箱根リトリート före & villa 1/f(フォーレ&ヴィラ ワンバイエフ)」。都心から120分という立地ながら、標高700mと高尾山(599m)よりも高地にあり、避暑地に来た気分になれます。
今回取材に訪れたのは、完全独立型の「villa 1/f」。1万5000坪の広大な敷地に、18棟のみゆったりと点在するヴィラは、地形に合わせて一つ一つデザインされた建物で、まるで“リゾート村”のよう。滞在中も、我が家のごとくゆったりと過ごすことができます。
ヴィラには、暖炉が設けられ、揺らめく火を眺めながら鳥や季節の虫の声に耳を傾けると、自然と一体になったような不思議な感覚に。全ヴィラに、ヒノキの露天または半露天風呂の温泉が完備されており、長期滞在や季節ごとのリトリートにも最適です。
写真は、温泉スイート「いぶき」(90㎡、定員2名)。上部の大きな三角窓が特徴です。時計も、テレビもない室内からは、森の揺らめきと太陽の位置でのみ時の流れを確認できます。虫のコーラスと、夜空が睡眠のおとも。翌朝は、森からの優しい陽で目を覚ます、そんなステイです。
ヴィラに囲まれるようにある「俵石」もまた、当リゾートの特徴のひとつ。歴史ある数寄屋造りの空間に、ラウンジやダイニングなどがあります。
この建物は、大正3年に東京の千歳座(後の明治座)などを手掛けた建築家・島田藤吉が創業し、多くの文化人に愛された温泉旅館「俵石閣」(後の料亭俵石)を改装した「俵石」。当時の建築常識である「真・行・草」をあえてミックスするのが島田藤吉が得意とした意匠ですが、その“粋”が「俵石」となったいまも多く残っています。
その中でも、特に見ていただきたいのは、各窓にはめられた「大正ガラス」。
いまはもう作ることができないというこのガラスは、波を打つように歪んでいて、ガラスを通してみる俵石の庭と周囲の緑をより一層美しくしています。本物の証として、吹きガラスの工程から生まれる、自然な気泡も魅力です。
部屋で小休憩を終えた後、訪れてほしいのは、風を浴びながら寛げる「free bird & terrace」。ドリンク類や季節のウェルカムサービス(8月はフルーツティーやかき氷)をインクルーシブで楽しめます。
室内には、ブックディレクターの幅 允孝さんが率いる「BACH」がディレクションしたブックライブラリーや、天気にかかわらず楽しんでほしいというオーナーの想いから、玩具も多数揃っています。読書、ボードゲーム、散歩、自然観察、アペリティフ……と、楽しみ方は無限大です。
また、自然いっぱいな当ホテルは、実はすべて草花の管理をホテルマンが行っているとのこと。それ故に、今年はムササビの子どもが3匹生まれたこと、数日前に鹿が現れたことなど、都市部のホテルマンと交わす会話とはまた違う、“自然”な情報を聞くことができました。
箱根の奥地・仙石原の箱根リトリートの魅力は、歴史ある建物と自然、そして、ヒトにあります。リゾートなのに、どこか懐かしく、あたたかい。そんな気持ちにさせてくれる場所です。
箱根リトリート före & villa 1/f
客室数 :villa 1/f 18室 ※ホテル棟のföreは、37室
住所 :神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1286−116
問い合わせ:https://www.hakone-retreat.com/villa/