〔特集〕歴史と希望の物語を伝える「学び舎の桜」 毎年春になると、子どもたちの成長を祝福するかのように開花する学び舎の桜。ひときわ美しく咲き誇る花は、長年木々が大切に守られてきた証です。学び舎の桜は、いつ誰がどのような想いで植えたのでしょうか。5校の桜の歴史と物語に迫ります。
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神戸女学院中学部【兵庫県・西宮】
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ博士が設計した神戸女学院の渡り廊下のアーチをくぐる、中学部新一年生とそのご家族。ヴォーリズは、校内の建築と自然環境の調和の美を追求した。
桜色に染まる、重要文化財のキャンパス
20世紀に数々の名建築を残したウィリアム・メレル・ヴォーリズの最高傑作の一つとして知られ、今年創立150周年を迎える神戸女学院。ヴォーリズ設計の現存する12棟が重要文化財に指定されています。
夕陽が差し込むと、温もりに満ちながらも荘厳な空気が流れる礼拝堂。
南地中海様式の重厚で洗練された校舎は、美術館と見紛うほど。伝道者でもあったヴォーリズは、「真に芸術的な建築空間は、優れた人格を形成し、魂の成長をも促す」との信念のもと、設計したといわれています。
入学式が行われた左奥の講堂は、アーチ型の窓など南地中海様式の特徴が際立つ。校舎の屋根瓦は淡路の窯で焼かれ、7色で構成されている。
「うちの学校は、この“岡田山”全体をキャンパスとする約14万平方メートルの敷地内に調和する、建築と自然環境が重要文化財に指定されています。当然、敷地内の桜の木も文化財なのです」と、学校の歴史に詳しい史料室の佐伯裕加恵さんは話します。
1875年にアメリカ婦人宣教師により開かれ、約90年前に建てられた現在の校舎は、実は宣教師や教育者などで結成された「在米神戸女学院財団(KCC)」が集めた寄付金で建てられました。その額は当時で70万ドル、現在では100億円にも上ります。
シェイクスピアの作品に出てくる植物を植えた「シェイクスピア・ガーデン」の前で。
キリスト教を基軸とした女子の自立を目指した教育の普及のため、人生をかけて学校を築き上げようとしたアメリカの宣教師をはじめ、母校を想う卒業生により実現した、との記録が残っています。
校庭で部活のブラスバンドの練習に励む在学生。 「戦後、GHQの通達は絶対だった時に、本校は接収から免れたのです。このような美しい校舎が建ち、今まで守り受け継がれてきたことを考えると、ここは“奇跡の学校”だといわざるを得ません」と、事務長の門田 誠さん。
家族と友と記念する、新たなスタート
2024年4月5日に行われた中学部の入学式では、満開の桜がキャンパスを桜色に染め、エレガントな校舎をいっそう優美に引き立てていました。
毎年、入学式に気になるのが天気と桜の開花状況だ。2024年4月5日に行われた入学式では、澄み渡った青空の下、キャンパスの桜は咲き誇り、新しい人生の門出に心躍る少女たちとその家族を温かく迎え、祝福しているかのようだった。
待ち望んでいたかのように、この日満開となった校内の桜。
講堂内で行われた2024年4月の中学部の入学式。2階のパイプオルガンから讃美歌の音色が響く。床から天井、ドアの取っ手といった細部まで美しくデザインされた美の空間。
入学式を終えた神戸女学院中学部の新一年生とその保護者の笑顔が輝く。
大きな関門を潜り抜け、この歴史的な美の空間でこれから6年間の学校生活を送る新入生の顔には、とびきりの笑顔が輝いていました。
喜びと期待を胸に抱く新一年生とそのご両親。
ヴォーリズが願ったように、洗練された趣と美の観念を育み、やがて母校を支え、学び舎の桜の風景をも伝えていくでしょう。
満開の桜を背景に、これからの中学校生活に胸を膨らませる小学校からの友。
(次回へ続く。
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