「Pale Green Ghosts」練習中のワンシーン。こんなディープエッジで滑りながら上半身でも自由自在なパフォーマンスができてしまう髙橋選手だから、その演技から一瞬たりとも目が離せない。 髙橋選手のスケートをこよなく愛する、ブノワ・リショーさんの想いを全文公開!
ブノワ・リショー(振付師)
初めてダイスケが競技に復帰するという話を聞いた時は、私はシカゴにいました。
オリンピックチャンピオンのアリオナ・サフチェンコと一緒だったのですが、ブライアン・ジュベールが私に連絡を取りたいという話が舞い込んできたのです。そして彼が「ダイスケが君と連絡を取りたがっているよ」と言うので、本当に驚いたのです。
ダイスケが「フリーのための新しい振り付けを考えてもらえないか」と頼んで来た時は、競技生活を再開する事実を知らなかったので大変驚いたと同時に、これは素晴らしい機会に遭遇したとも思いました。
氷上のプリンスであるダイスケがフリーの振り付けを頼んできてくれるなんて、これ以上の光栄はありません。それをぜひ応援したいと思ったのです。
私自身は、振り付けを担当する選手にそれぞれ、音楽を含めてユニークで特徴のあるスタイルを提供するように心がけています。
しかし、ダイスケから求められているものはただ新しいというだけではなく、表現者、演技者、そして美しい一人の人間としての成長を感じさせる何かでなくてはならないという考えに至りました。その集大成がこのプログラムです。
皆さんにはダイスケをひと目見ただけで、何か特別な魂の力というようなものを感じてもらえると思います。
それは彼の内面から湧き出てくる力とも言えるのかも知れません。
私はそのダイスケの魂を特別な氷上のプログラムという形に昇華させ、表現するように努めました。もちろん音楽にもこだわっています。彼が迷いなく選んだのはJohn Grantの「Pale Green Ghosts」でしたが、この音楽に合わせて滑った最初の時から、音楽的にも私たちの目指す姿にピッタリだと確信しました。