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大きく進歩するがんの免疫療法。日本がん免疫学会理事長 河上 裕さんに聞いた最新動向

2019.06.14

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薬の効きを予測するバイオマーカー探しが進む


効果予測のためのマーカー候補として、以下のようなものが考えられています。

1つは免疫チェックポイント阻害薬は免疫を司るT細胞に働きかけるため、がんの組織に集まるT細胞の数や種類によって効くタイプを見分けられるのではないかということです。

また、がん細胞や周りの免疫細胞がPD-L1を出しているかどうかも効果の目印になりそうです。


さらに、T細胞は遺伝子の傷をターゲットに作動することが多く、遺伝子に傷が多いタイプのがん(例えば喫煙者のがんやDNAを修復する分子に異常があるがんなど)かどうかを調べることで、治療効果の予測ができるのではないかと期待されています。

実際、DNAミスマッチ修復酵素の異常を持つがんでは、その異常を検査で調べたうえで抗PD-1抗体薬を使えるようになっています。

一方、免疫チェックポイント阻害薬は免疫のブレーキをはずすために、免疫が過剰に働いて起こる自己免疫疾患に似た副作用が現れることがあります。

この副作用の起こりやすさの予測についても研究が進められています。

免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいタイプには別の方法で


がんの免疫療法は、免疫ががんを貪食し、T細胞が活性化して、がん細胞を排除するまでのプロセスのさまざまな部分を強化するように研究されています(下図参照)。

免疫を調節するポイントの制御法を組み合わせる『複合がん免疫療法』


複合がん免疫療法

環境因子
・腸内細菌叢・喫煙・紫外線・食事・肥満・やせ・感染症など


海外ではゲノム編集技術によって免疫にブレーキをかけるPD-1分子をつぶしたT細胞を作り、体内に入れる臨床試験も進められています。

最近のがん免疫療法の話題として挙げられるのが、2019年3月に、小児を含む25歳以下の難治性の急性リンパ性白血病や悪性リンパ腫の治療法として承認されたCART療法です。

これは、患者から取り出したT細胞にがんを見分けるたんぱく質を遺伝子操作で組み込んだ人工的なT細胞を体内に入れることでがん細胞を排除するもので、白血病など遺伝子の傷が少ない(=免疫チェックポイント阻害薬が効きにくい)タイプのがんにも効果がみられています。

このT細胞を体内に入れるのは1度だけですが、薬価が5000万円程度とされ、米国では治療効果があったときのみに支払い義務が生じるという取り決めになっており、日本でも価格や支払いについての検討が行われています。

また、がんに浸潤しているT細胞を体外で培養し、体内に戻すTIL(腫瘍浸潤Tリンパ球)療法、がん抗原を認識するT細胞受容体の遺伝子を導入したT細胞を体内に入れるTCR-T療法も研究されています。

河上さんらは、CAR-T療法を固形がんに使う研究、薬物療法が効かなくなった進行子宮頸がんにTIL療法を行う研究などを進めています。
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