「亮さんの作品に決まったとき、〝みんなに愛される!〟と嬉しくなりました」
―― 松岡修造
「『家庭画報』にその格好ですか」と谷口さんをソフトに責める松岡さん。スーツ、シャツ、靴/紳士服コナカ松岡 最近はグッズも増えて、この二人を目にする機会も増えました。僕が亮さんだったら、分身のように感じて、見るたびに「僕がいる!」と胸を躍らせると思いますが、亮さんはいかがですか。
谷口 分身というよりは、巣立っていった子どもたちが活躍してくれている、そんな感覚ですね。
松岡 子どもだとすると、親としては絶対幸せになってほしいですよね。その点は大丈夫そうですか。
谷口 そこはもう安心しています。国が育ててくれていますので。
松岡 福岡で生まれて、国が育てて、これからは世界の人々が大きく育ててくれるはずですよ。僕の感覚では二人はすでに羽ばたいています。
正直、過去の大会では「これは賛否両論あるな」と思うマスコットもありました。それだけに亮さんの作品に決まったとき、僕は心の底から嬉しかったし、安心したんです。「よかった、世界中のみんなに愛されるマスコットが誕生した!」って。
谷口 ありがとうございます!
松岡 世界といえば、亮さんはアメリカの美大を卒業されていて、英語が堪能なんですよね。
谷口 だいぶ抜けてしまいましたけど、日常会話くらいなら。
松岡 アメリカでの経験は今の人生に生きていますか。
谷口 はい。尊敬できる人生の師に出会えたのが一番ですね。
松岡 そのかたはどんなことを教えてくれたんでしょうか。
谷口 ローラという先生なんですけど、知的で、生きていることをすごく楽しんでいる人で。いつも「あなたはあなたのままでいいのよ」といっていました。生き方やものの見方など、ずいぶん影響されましたね。
同業者の父の言葉に背中を押されて
松岡 亮さんは主に今回のマスコットのような二頭身のキャラクターをデザインされていますが、きっかけはイラストレーターの大先輩であるお父さまの言葉だそうですね。
谷口 そうなんです。あるとき、僕が描いた猫のキャラクターを見た父から、「それ面白いな。おまえはキャラクター一本でいけ!」といわれたのがきっかけです。
松岡 でも、そういわれて、「わかりました!」と思えるものですか。
谷口 プロの言葉ですし、それまでずっとダメ出しばっかりだったのが、突然褒めてくれたので、「いけるんじゃないか」と自信が湧いたんです。父のアドバイスは昔も今もわりと素直に聞きますね。
松岡 お父さまの一言に背中を押されたんですね。東京2020マスコットに採用されたことについては、何とおっしゃいましたか。
谷口 決まってすぐに連絡しなかったので、「すぐ連絡せんかったもんね、おまえは」と、しばらくグチグチいわれました。
松岡 それはそうでしょう! 「わしのおかげなのに」って。
谷口 わはは(笑)。「俺出してないけんね~」ともいってました。
松岡 自分が応募していたらわからなかったぞ、と(笑)。