究極のアスリート魂
記憶に残るより、記録を残したい
そして、一夜明けて、24日のエキシビション前に行われた囲み会見。NHK杯優勝の余韻はすでに消え、GPファイナルへ向けて意識を集中している羽生選手の姿がそこにありました。
「やっとGPファイナルで戦える位置まで来ました。優勝したい。2019年3月の世界選手権で銀メダルになったとき、FSはそこそこよかったんです。でも、それだと記憶に残っているかもしれないけれど、記録には残らないんですよね。それでは意味がないと僕は思うので。
今は、全世界が10月のスケートカナダの羽生結弦の演技(SP109.60点、FS212.99点、合計322.59点は今季世界最高得点)を追ってくると思うんですよ。それは僕自身も一緒。僕もあの演技、あの点数を超えたい。ベストの状態のネイサン・チェン選手と、ファイナルで戦いたいです」と、GPファイナルへの意気込みを語りました。
FS本番前、集中した表情の羽生選手。ブライアン・オーサーコーチ(左端)は試合後に「去年のことをユヅルはかなり考えていたと思います。怪我をしたことが頭の中にあったはず。今回は怪我なくやり切ることが使命でした。それをやり遂げられ、私も誇りに思っています」とコメント。今回の取材中、耳に残ったのは「羽生結弦らしい」「これが羽生結弦なんだという演技を見せたい」と何度か繰り返された発言。「羽生選手が考える、理想の羽生結弦とは?」という問いに「僕の中で9歳の自分とずっと戦ってるんですよ。全日本ノービスで優勝したときの、自信しかない自分、自信の塊の自分に『おまえ、まだまだだよ』と言われてる気がするんです。大人になった今の自分と、“なんでも出来るぞ!”と思っている小さい頃の自分が融合したら、それが最終的に『理想の羽生結弦』だと言えるのかなと思います」と語ってくれました。深いです! 自分と徹底的に対峙するその姿勢、まるで哲学者の思考です。