最も重要なのは、その人がどういうふうに生きてきたか
なぜ又次は多くの人から愛されるのか。獅童さんは、実生活の中で出会う「この人なんか信用できるな、この人がいるとなんか心強いなっていう人」に自身が感じた又次の魅力を重ねます。
「そんな人って、どういう人なんだろうって分析すると、やっぱり実直で嘘がなくて。言葉ではない、内面から出てくる人間性っていうものを人は瞬時に感じ取りますよね。そこから信頼できる、できないっていうことが生まれてくると思っていて。じゃあ、信頼できる人ってなんだろう。やっぱり誠実で正直、真面目。それで、どこかミステリアスな部分もあるっていう人がすごく人間的にも魅力的だし、信頼できる人だと思うんです。そういうものを腹の底に収めつつ演じる。台本に書いてあるセリフ以外の行間ですよね。その人がどういうふうに生きてきたのかが最も重要な役柄でした」
又次が生きてきた数十年。それを、準備から撮影まで含めて数か月で自身のものとし、醸し出さなければなりません。それは又次に限ったことではなく、どんな役でも同じなのですが、その点における獅童さんなりのアプローチは……?
決して言葉数は多くない又次。言葉にならない、できない又次の気持ちを表情で見せる場面も多く、その度に「さすが」と唸らされる。