歌舞伎の古典と又次の役作りには共通する部分がある
「歌舞伎は、例えば武将だったら強さなりなんなりって、立ち回りの場面がなくても表現しなきゃいけないんですよ。そういう役柄が、歌舞伎でも時代劇でもいっぱい出てくる。それを演じるときは、上っ面だけではダメで。腹の底に何を置いて演じるかっていうことが最も大切。それができてるかできてないか、自分ではわからないし、お客さまがジャッジすることだと思うんですけど、そういった意味での役作りっていうのは、非常に歌舞伎の古典を演じるときと共通する部分がありますね。
今回の又次という役は、そこに立っている姿で匂いがするような人でいたいなと思ったんですよ。所作一つで人柄が出る。とても次元の高いところなのかもしれないけど、そういうところに落とし込まないとできない役だなと思ったので、歌舞伎の古典的な役柄を演じるときにどういうふうにしてるかな、なんてことを思い返したり。
若いとき乱暴者だったからって、うわべでそうするっていうことではなく、物静かなんだけど、もしかしたらすごく強い人で、ちょっと暴れてた時期もあったのかなっていうようなことが、肉体から匂い立つような又次像を想像して現場に行って、監督の指示に従い作っていきました。監督は、近松(門左衛門)の世界観でやってもらいたいって。強いんだけど、どこか儚いっていうことなのかな。儚さの美学みたいな。今までも強い男は数々やってるんだけど、今回は静かな、内に秘めた強さっていうことが最も意識したところです」
本作には、「監督のこだわりがすべて詰まっていると思います。映像も衣装もカツラも、最も大切な料理と器も。こだわり抜かれてます」。