この映画はラストシーンのためにある!?
言葉にして発しないだけではなく、感情を見せることもない厚久。やがて物語は、予想もつかない展開を迎え、ラストシーンへ。映画の公式サイトで見られる、仲野さんと若葉さんが写る車中の写真のシーンです。石井監督いわく、「この映画は、ラストシーンのためにあると言っても過言ではない」。本作を観た人もまた言うかもしれません。「ラストシーンのために、この映画を観てほしい」と。それほどに凄絶なのです。
「僕だけじゃなくて、若葉さんも監督もスタッフも、このシーンにかけていた気がしますね。それまでの過程で何度も思いを吐露したくなったし、感情を表現したくなったし、溢れ出てしまうこともあって。でも、その度に監督から“もう少し我慢してほしい”って言われていました。重要なのは、僕が自発的に流したのではなくて、武田が勝手に決壊して、それによって引き起こされる、ある種の事故みたいな。それまで抑えきれていたものが、突発的な事故に遭ったみたいに決壊していくっていうのは、意識していたところですね」
仲野さんには、この場面でもう一つ、そしてそこまでのシーンでも、意識していたことがあります。
車中でのシーンを撮り終えたあと、若葉さんと2人で食事に行ったという仲野さん。ただ、「全部出し尽くして、無言でしたね(笑)」。