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大きく進歩するがんの免疫療法。日本がん免疫学会理事長 河上 裕さんに聞いた最新動向

2019.06.14

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未来の医療 進歩する生命科学や医療技術。わたしたちはどんな医療のある未来を生きるのでしょうか。「未来を創る専門家」から、最新の研究について伺います。今回は「複合がん免疫療法」についてです。前回の記事はこちら>>

免疫チェックポイント阻害薬の実用化で進展「複合がん免疫療法」


免疫チェックポイント阻害薬の開発や臨床応用が進むにつれ、その研究から得られた知見を生かすことで、がんの免疫療法が大きく進歩しています。

前回に引き続き、国際医療福祉大学医学部長、慶應義塾大学医学部特任教授で、日本がん免疫学会理事長の河上 裕さんに、がん免疫療法の最新動向について聞きます。

〔未来を創ろうとしている人〕 河上 裕(かわかみ ゆたか)さん河上 裕さん


国際医療福祉大学医学部 医学部長 慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所 特任教授
1980年慶應義塾大学医学部卒業後、国立大蔵病院内科、慶大医学部血液感染リウマチ内科を経て、85~97年に米国・南フロリダ大学、カリフォルニア工科大学、NIH国立がん研究所に留学。帰国後、慶大医学部先端医科学研究所教授、同所長、同大医学研究科委員長を歴任。2019年から現職。日本がん免疫学会理事長。ヒト疾患の免疫病態の解明と制御、特に腫瘍免疫学研究と免疫療法開発を専門とする。

免疫チェックポイント阻害薬が効かない理由を分析


私たちの体には、免疫によって異物やがん細胞などを排除するシステムと、免疫が過剰に働いて体を傷つけないように抑制するシステムの両方が備わっています。

がん細胞は後者のシステムを悪用し、特有の分子を出して免疫にブレーキをかけ、免疫細胞の攻撃から逃れようとします。

免疫チェックポイント阻害薬は、このブレーキがかからないようにする薬で、日本では2014年以降、悪性黒色腫や肺がん、腎がんなど約10種類の進行がんに使われるようになりました。

免疫チェックポイント阻害薬の中心となっている抗PD-1/PD-L1抗体薬では、単独で使った場合、30パーセント以上の腫瘍縮小効果が認められる患者は2割前後とされています。

非常に効果が高い人がいる半面、約8割の人にはあまり効果が期待できないのが実状です。

ただし、この免疫チェックポイント阻害薬が効かない理由を分析することで、「免疫チェックポイント阻害薬の効果予測マーカーの探索、効きにくい原因を取り除く方法の研究、免疫チェックポイント阻害薬とは別の新しい免疫療法の開発といった動きが活発になってきました」と河上さんは話します。

免疫療法を含めた薬物療法の効果を左右する主な因子としては、「がん細胞の遺伝子異常」「患者の免疫に関連する遺伝的な体質」「環境や習慣」の3つが明らかになっています。

「環境や習慣」には喫煙、食事、肥満・やせ、大気汚染、紫外線、感染症、精神的ストレスのほか腸内細菌叢そうといった因子があります(腸内は体内ではありますが、口や肛門を通じて外部とつながっており、腸内細菌叢は環境因子となります)。

これらの因子と免疫チェックポイント阻害薬の関係を調べていくと、がんの性質、患者の体質、環境による影響で免疫状態は左右され、それが治療の効果と関連することがわかってきました。
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