20代と40代の二度、卵巣のう腫の手術を受けたことで、小田瑞惠先生(56歳)の中に一つの指針が生まれました。女性として、医師としてさまざまな人生の選択肢に遭遇したとき、一般論や世の中の風潮に流されることなく“私はどうするか”を決める習慣が自然に身についたのです。小田先生が、更年期という体の節目を比較的穏やかに過ごしている背景の一つには、体の状態を念頭に置いて仕事と私生活の調和を第一に歩んできたことが関係しているといえます。
一回目の手術は23歳のとき。偶然、腹部のしこりに気がつき、卵巣のう腫の一種である「類皮のう胞腫」と診断されました。良性でしたが、本来は親指大の卵巣が直径10センチまで腫れており、腫瘍を切除したのです。
術後、担当医から「卵巣を少ししか残せなかったので子どもを産むなら早いほうがいい」といわれ、自分なりの人生設計を考え始めます。20〜30代はひたすら医師としてのキャリアを積むことに邁進する女性も多いなか、小田先生は仕事と自然な妊娠の両立を図る道を選びます。
26歳で結婚し28歳で出産。理解のある教授や同僚に恵まれ、産休明けには、子育てと両立しやすい東京都がん検診センターに勤務。子どもを保育園に預け、18時には迎えに行くという生活を続けました。