クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第142回 エルネスト・ショーソン『ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲』
イラスト/なめきみほ
匂い立つように美しい音楽とはまさにこのこと
今日1月20日は、フランスの作曲家エルネスト・ショーソン(1855~99)の誕生日です。
パリの裕福な家庭に生まれたショーソンは、弁護士から音楽家へと転身した変わり種です。その音楽は、音楽の師であるセザール・フランク(1822~90)に強い影響を受けつつ、19世紀末の潮流と自らの持つ旋律美を生かした見事な作風が、代表作『詩曲』や『ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲』に反映されています。
特に後者の2楽章「シシリエンヌ」の美しさはまさに絶品。“匂い立つような美しさ”とは、このような音楽のことをいうのではないでしょうか。
そのショーソンは、ある日愛用の自転車に乗って外出中に、自宅そばで事故死します。その様子とショーソンについては、中沢新一&山本容子著『音楽のつつましい願い』の中の一遍に印象的に描かれていますので、興味のある方はぜひお読みいただきたい。残された「シシリエンヌ」の美しさがより一層際立つに違いありません。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。