今月の人 向井理さん
2023年の主演ドラマ『パリピ孔明』が大反響を呼び、現在は警察官で天才詐欺師でもある主人公を演じるドラマ『ダブルチート 偽りの警官 Season1』が絶賛放送中。充実ぶりを見せる向井 理さんが、舞台『ウーマン・イン・ブラック~黒い服の女~』に挑みます。
役者の“語り”で観客を引っ張っていく作品
ロンドンのウエストエンドで、2023年の春まで34年間上演されてきた本作品は、たった二人の出演者で観客を恐怖の渦へと引き込む傑作ホラーエンターテインメント。日本での上演は、9年ぶり8度目となります。
「せっかくやらせていただくからには、今までとはまた違った見せ方にも挑戦したいと思っています。少人数のカンパニーでディスカッションしやすいですし、より効果的な演出になるように、いろいろアイディアを出していけたらなと」
そう話す向井さんが演じるのは、中年の弁護士キップスに雇われた若い俳優。前回の公演に続いて、勝村政信さんがキップスを演じます。
舞台は観客のいない小さな劇場。そこで二人は、長年キップスを苦しめてきた忌まわしい呪縛を解くために、かつてキップスが体験した恐ろしい出来事を再現していきます。俳優が若き日のキップスを、キップスは自身が出会った人々を演じながら……。
「勝村さんは、仕事でご一緒する前から、サッカーつながりで親しくさせてもらっている気心の知れた先輩。ついに舞台で共演できるということで、とても頼りにしています。ご本人からは、最初に『もう全然覚えてない。一緒に頑張ろう』と言われたんですが(笑)、キャラクターを演じ分けていく姿を間近で見られるのも楽しみです。役者の“語り”でお客さんを引っ張っていく作品なので、大量のセリフを早く覚えて、しゃべり方も工夫しながら、お客さんの想像力をより掻き立てていけたらと思います」
舞台はいろいろな意味でリセットできる場所
そんな向井さんの初舞台は、俳優デビューして6年目の2011年。はじめの頃は、「吐きそうになるくらいガチガチに緊張して」、翌年2作目の舞台『悼む人』に出演した際には、見かねた共演者の手塚とおるさんが「みんな緊張しながら舞台に臨んでいるのだから、気負わなくていいんだよ」と、さまざまな劇場での俳優たちの姿を収めた英国の写真集をプレゼントしてくれたそうです。
サッカーという共通の特技を持つ向井さんと勝村さんの“初共演”はグラウンドだったそう。「勝村さんから『地元に新しくできるJ1のサブグラウンドで試合をやるから、おいでよ』と軽く誘われて行ったら、元Jリーガーも出場するテレビの生中継も入ったイベントだったんです。びっくりして、あわてて事務所に電話しました(笑)」コート、Tシャツ、パンツ/dunhill
その後、コンスタントに舞台経験を重ね、2023年はロングラン中の『ハリー・ポッターと呪いの子』と、地方公演もあった『リムジン』で主演を務めました。
「今も舞台は、やらなくていいものなら、やりたくはないです。でも、舞台でしか見られないものも確かにあって、本番2日目から徐々に視界が開けて、セリフがない時の共演者の表情やお客さんの顔が見えるようになってくると、楽しくなってくるんです。上演時間が決まっていて生活リズムが整うし、お客さんの前で集中して一つの作品を演じることで、役者としてもリセットされる気がします」