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没後120年、生活空間の中でこそ映えるエミール・ガレの器

2024.09.02

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リビングルームに自然の情景を取り込む

【左:リンゴ文花瓶】

【左:リンゴ文花瓶(1925年 径24.4×高さ29.6センチ)】
ガレの没後、制作を引き継いだガレ工房の作品。1925年のアール・デコ博覧会に向け開発された、レリーフを彫り込んだ型にガラスを吹き込んで文様をつける手法「スフレ」でりんごを表している。

【右:蘭文花器(1895~1900年 径12.6×高さ36.4センチ)】
ガレは故郷のロレーヌ地方に自生する野生蘭の生態に興味を持ち、研究した。暗闇の中で見る蘭の姿を影絵のように表現した作品。「一見地味な印象ですが、自然の神秘を描いた秀作です」(池田さん)。

華麗で幻想的なガレの作品は、生涯を通じて「自然」がテーマになっています。植物学者の一面を持っていたガレは、とりわけ花や昆虫の生態に惹きつけられながら、比類なき技法を使って自然の不思議や神秘の根源を描き出そうとしています。


【藤に蝶文花器】

【藤に蝶文花器(1900年頃 16.7×12×高さ49.5センチ)】
ガラスの上に色ガラス片を象嵌する技法「マルケットリー」で藤の花を、腰部には色ガラス片の表面を削って模様を表す技法「グラヴュール」で蝶を描いた傑作。台はブロンズ製。

「藤に蝶文花器」や蘭文、蝶文の花器は、ガラスを研磨して細かい文様を施したり、ガラスの素地に異なるガラスを象嵌する斬新な加飾法を駆使することでイマジネーションを搔き立てる、ガレならではの逸品です。

【蝶文花器】

【蝶文花器(1889~1900年 10×6.2×高さ13センチ)】
透明ガラスに青色の金属酸化物を練り込んで天然石のような複雑な素地を作り、その上にピンク色のガラスを被せている。ピンク色の層を「グラヴュール」で削り取り、蝶の文様を浮き彫りにしている。

日々の暮らしとはかけ離れた存在のように感じられるかもしれませんが、リビングルームなどの身近な空間に置くことで、キラリと光るとっておきの存在になります。

「学者の眼と、自らの思いを語る詩人のような心を持ち合わせた表現は、ガレ作品の真骨頂です。今年は没後120年を記念して各地で展覧会が催されます。まずは本物を見て、自分だけの宝物を探してみてはいかがでしょう」(池田さん)

エミール・ガレ(Emile Gallé 1846~1904)
アール・ヌーヴォーの巨匠といわれるフランスの工芸作家。陶磁器・ガラス販売業を営む家に生まれ、リセに通う頃から自然に親しみ、教養を積みながら豊かな芸術性を身につけた。当時流行したジャポニスムから多くを学び、詩情に満ちた作品はパリ万国博覧会で高く評価される。

2024~25年に日本で開催されるガレの展覧会

エミール・ガレ没後120年記念
北澤美術館のガレ

脚付杯《フランスの薔薇》 1901年 北澤美術館蔵

脚付杯《フランスの薔薇》 1901年 北澤美術館蔵

展示される機会の少ない秘蔵の名作を含め、初期からパリ万国博覧会の出品作、黄金期の作品など、選りすぐりの所蔵品を特別展示。

●北澤美術館
〜2025年3月11日まで
住所:長野県諏訪市湖岸通り1-13-28
TEL:0266(58)6000

没後120年
エミール・ガレ展 ~美しきガラスの世界~

雪持松に鴉(からす)図花瓶 1898年頃 個人蔵

雪持松に鴉(からす)図花瓶 1898年頃 個人蔵

草花や果物、昆虫や海洋生物などをつぶさに観察して生み出された花器やランプ、ジャポニスムの影響を受けた作品などの傑作を展示。

●美術館「えき」KYOTO
2024年11月22日~12月25日
住所:京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町(ジェイアール京都伊勢丹7階隣接)
TEL:075(352)1111

※上記のほか、2024年10月12日~12月15日に徳島県立近代美術館、2024年11月2日~2025年1月26日に富山市ガラス美術館、2025年2月15日~4月13日に東京のサントリー美術館で、それぞれガレをテーマにした展覧会が開催される予定。

「2024 アール・ヌーヴォー 魅惑の煌めき ガレ・ドーム ガラスの世界展」のご案内

この特集で紹介した作品をはじめとするエミール・ガレの作品と、ドーム兄弟の作品を集めた展覧会。ガレの希少な初期作品も含め、暮らしの空間に寄り添うガラス器が揃う。その多くはガラス越しではなく鑑賞でき、すべて販売される。入場無料。

会期:~2024年9月2日
会場:阪急うめだ本店9階 阪急うめだギャラリー
住所:大阪市北区角田町8-7
TEL:06(6361)1381
開場時間:10時~20時(最終日は17時閉場)

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年09月号

家庭画報 2024年09月号

撮影/伊藤 信 取材・文/西村晶子 撮影協力/パーク ハイアット 京都、イムラ アート ジェム

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