今月の舞台人：瀬戸康史さん
英国の劇作家キャリル・チャーチルの新旧の話題作が、英国を中心に活躍するジョナサン・マンビィ演出の2本立てで上演されます。
「ジョナサンさん演出の作品で堤（真一）さんとご一緒できることが、本当に嬉しくて」と話すのは、2本のうち『A Number—数』に出演する瀬戸康史さん。近未来を舞台にアイデンティティを問う二人芝居で、瀬戸さんは堤さん演じる父と対峙する、クローンを含む3人の息子を演じます。
二人芝居ならではの濃い時間が楽しみで仕方ありません
「堤さんとは今回初めてご一緒するんですが、僕の緊張をほぐすような話題を気さくに振ってくださる、とても素敵な方。去年初めて二人芝居を経験して、ずっと稽古ができる喜びや、相手役の方やスタッフさんとより絆が深まる楽しさを知ったので、濃い時間を過ごせることが楽しみで仕方ないです」
作品が扱うテーマの深さや役を演じ分ける難しさも感じていますが、「まずは３人の心の部分をしっかり作りたい」といいます。
「姿形は同じクローンでも、心はそれぞれ違うはず。役の心が変われば、話し方や雰囲気も自然と変わってくると思っています。僕が共感を覚えるのは、3番目に登場する息子。彼はとてもポジティブな生き方をしていて、たぶんそれは育ってきた環境のせいだけじゃなく、彼自身が物事をよいほうに転換しようと努力してきたからじゃないかと感じているんです」
そう話す瀬戸さん自身も、ポジティブな思考の持ち主。「福岡の田舎で、フレンドリーな父と穏やかな母のもと、怒られることや喧嘩をすることもなく、のびのびと育ったことが大きい気がします。今も、家族といる時間や趣味の絵を描いている時間に自然とリフレッシュできるので、ストレスが溜まることはほとんどないです」
唯一、16歳で上京して数年間は「標準語で話す大人たちが怖くて、何かとマイナス思考になっていた」そうですが、2015年の舞台『マーキュリー・ファー』で白井 晃さんの演出を受け、「『失敗したらどうしよう』とか『舞台は怖いな』とか、作品と関係ないことばかり考えていた自分が全部リセットされました」。
以降は「その作品の色に、どうなじめるかがテーマになった」という瀬戸さん。7年前に参加したジョナサン氏のワークショップで、仲間と一緒に作る演劇のさらなる面白さを味わい、「いつかジョナサンさんと仕事ができたら」と思っていたそう。
「出会いに恵まれて、本当に幸せでありがたいです。この流れにずっと乗っていけるように、しっかり努力していこうと思います」
瀬戸康史（せと・こうじ） 1988年福岡県出身。2005 年に俳優デビュー。『グレーテルのかまど』（NHK・Eテレ）等ではナビゲーターも務める。2017年『関数ドミノ』で文化庁芸術祭演劇部門新人賞、2022年『愛なのに』でヨコハマ映画祭主演男優賞を受賞。映画『スオミの話をしよう』が公開中。
Bunkamura Production 2024 ／DISCOVER WORLD THEATRE vol.14
『A Number―数』
『What If If Only―もしも もしせめて』
キャリル・チャーチルの2002年初演の名作『A Number―数』と、日本初演となる最新作『What If～』を2本立てで上演。『A Number―数』の舞台は、クローン技術が発達した近未来。自分がクローンだと気づいたバーナード（瀬戸）は、父ソルター（堤）に会いに行くが……。
作／キャリル・チャーチル
翻訳／広田敦郎
演出／ジョナサン・マンビィ
美術・衣裳／ポール・ウィルス
出演／堤 真一、瀬戸康史（『A Number―数』）、大東駿介、浅野和之ほか（『What If If Only―もしも もしせめて』）
世田谷パブリックシアター～2024年9月29日（日）
S席1万1000円ほか
TEL：03（3477）3244（平日10時～18時）
※2024年10月4日（金）～14日（月・祝）に大阪、福岡公演あり
URL：
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/24_churchill/ 
