〔特集〕錦秋の京都を訪ねて イロハモミジの燃えるような赤に染まる京都の秋。平安貴族たちが競い合うように和歌や日記に残した紅葉の名所は、今も私たちに眼福を与えてくれます。人気の観光地にあっても、未だ静けさの残る奥京都へ秋の美味と令和の紅葉狩りへと皆様をご案内いたします。
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歴史、風土、文化に育まれた“京寿司”の魅力を探る
日本各地で「江戸前」の暖簾を掲げるすし店が多い中、京都には古くからこの地の歴史や風土が育んだ“京寿司”の文化が今もなお根づいています。数ある名店の中から、名料亭が始めた新店と、棒ずしや手まりずしが評判の店をご紹介します。
ひと口で食べやすく愛らしい。手土産にも人気の手まり寿司
下鴨いち満(北大路)
先代考案の「手まり寿司」5000円。海老、とろ、鯛、赤貝、あなごなどの12種類を盛り合わせる。ネタの一部は季節で変わる。
下鴨の閑静な住宅地にあり、地元の人たちが長年贔屓にする雅なすしと一品料理を楽しませてくれるすし割烹。「手まり寿司」は、お客様の要望で茶事や楽屋見舞など、おめでたい席の注文が多く、鯛や海老など縁起のいい魚介で作るようになったもの。店では春慶塗の葵盆に盛って出されます。
指を丸くして包むようにネタとシャリを球の形に握る。小鯛はさいの目、まぐろは筋を断ち切るように包丁目を入れる。
「うちの手まり寿司は、さらしで丸めるのではなく、口の中ではらりとほどけるように手で握っています」と、ご主人の奥野尚司さん。丸い形のすしめしになじむよう、ネタの種類に応じて細かく包丁目を入れ、ひと口で食べられる大きさにします。
「上ちらし寿司」3500円。具を混ぜ込んだすしめしに、空気を含ませるように焼いた錦糸卵を一面に敷き、その上にネタがのせられる。
京都では歴史が浅い、生ものがのる「ちらし寿司」も、この店ならではの優しい味。甘めに炊いて細かく刻んだかんぴょうやしいたけ、のりを混ぜたすしめしに、ふわふわの錦糸卵がたっぷりのります。
2品とも昼は先付と味噌汁、デザートがつくセットに。手まり寿司は夜の締めとして一貫から注文でき、折詰にして持ち帰りも可能です。
すっきりとした白木のカウンターの向かいに小上がりのお座敷がある。
下鴨いち満(いちま)住所:京都市左京区下鴨西半木町93-1
TEL:075(791)0101
営業時間:11時~13時、17時~22時
定休日:水曜
※要予約 夜は予算1人1万5000円~
(次回へ続く。
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