〔特集〕錦秋の京都を訪ねて イロハモミジの燃えるような赤に染まる京都の秋。平安貴族たちが競い合うように和歌や日記に残した紅葉の名所は、今も私たちに眼福を与えてくれます。人気の観光地にあっても、未だ静けさの残る奥京都へ秋の美味と令和の紅葉狩りへと皆様をご案内いたします。
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歴史、風土、文化に育まれた“京寿司”の魅力を探る
日本各地で「江戸前」の暖簾を掲げるすし店が多い中、京都には古くからこの地の歴史や風土が育んだ“京寿司”の文化が今もなお根づいています。数ある名店の中から、名料亭が始めた新店と、棒ずしや手まりずしが評判の店をご紹介します。
とろろ昆布をからめていただく豪盛な甘鯛の棒ずし
いづ重(祇園石段下)
色味のある皮を残した、もっちりと柔らかな身に、とろろ昆布がたっぷりとのる「ぐぢ姿寿司」5573円。ひと塩にした甘鯛とご飯の味がなじむ翌日も美味。
冷蔵庫のない時代、海が遠かった京都では、魚といえば若狭などで揚がった魚に塩を当てて保存性を高めた「一汐(ひとしお)もの」のことで、そうした魚を使ったさばずしなどの棒ずし、箱ずし、熟なれずしが主流でした。
八坂神社石段下に店を構える「いづ重」は、明治末年の創業以来、“京寿司”の文化を守り、今も伝統の味を受け継いでいる一軒です。
おくどさん(竈/かまど)に薪をくべて炊き上げるご飯で作るおすしは地元の人に愛され続け、ひな祭りや祇園祭などの行事食としても伝承されています。
昔ながらの薪のおくどさんで、いなり寿司の揚げも炊く。
「焼九条葱入り 大人のいなり寿司」5個1045円は3月のお彼岸まで。ご飯に柚子、ごぼう、麻の実が入ったいなり寿司もある。
看板ずしは、ひと塩のさばと甘めのすし酢を合わせたすしめしで作る「鯖姿寿司」。さらに4代目主人・北村典生さんが考案したのが「ぐぢ姿寿司」と、ねぎ入りの「いなり寿司」です。
「“京寿司”は今も昔も一番のご馳走で、豪盛であり、雅な風情のあるもんです。昔からのもんも新しいもんもひっくるめて、今あるのは、うちの店の味を大事にしてくださる祇園町のお客様がいたからやと思っています」と語ります。
2023年2月に新装開店した。旧店の古材を随所に用い、坪庭が眺められる。店内で出しているすしは、すべて持ち帰りが可能。
いづ重住所:京都市東山区祇園石段下
TEL:075(561)0019
営業時間:10時30分~19時
定休日:水曜・木曜
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