藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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11月の花「オンシジウム」
2種のバラとケイトウのアレンジ。飛び出すように挿したオンシジウムは‘オレンジスイート’という品種です。鮮やかなオレンジ色にえんじ色のリップが入り、よく目立ちます。バラは‘カルペディエム’と蕾つきの‘カタリナ’。ケイトウは‘アスカセレクト ベージュ’を使用。メラレウカや紅葉ヒペリカムを加えて、秋の雰囲気に仕上げました。
小花のランを脇役で活躍させると新鮮な印象に!
今回は中南米に自生するラン、オンシジウムを使った贈り花を紹介します。オンシジウムと聞くと、イベント会場やお祝いの席で飾られるスタンド花などで見かける黄色やオレンジ色の花という印象があると思います。私も以前はオンシジウムを贈り花に使うことはあまりありませんでした。
花と花のすき間を埋める役割をする花をアレンジ用語でフィラーフラワーといいますが、この時期に入手できる黄色系のフィラーフラワーは、スターチスか年明けから出回るミモザくらいしかありません。
オンシジウムの花はそれらより少し大きいものの、フィラーフラワーとして利用できることに気づいて以来、黄色系だけでなく、ピンクや白のオンシジウムも脇役として活躍させるようになりました。ランを脇役にするというのは少し贅沢ですが、いままでにない新鮮な印象のブーケやアレンジになるのは、制作していてとても楽しいものです。
オンシジウムの花はスカートを広げて踊っている女性に見えることから、ダンシングレディオーキッドという英名でも呼ばれます。そのひらひらした花姿はかわいらしく、贈り花に動きのある表情を加えてくれる効果もあります。ちなみに和名はムレスズメラン(群雀蘭)。たしかにスズメたちが軽やかに飛び立つさまも連想できますね。
1年中、何かしらの品種が出回りますが、多くは台湾からの輸入によるものです。日持ちがよいのでクオリティには問題ありませんが、できるだけ国産の花を使いたい私としては、国産のオンシジウムがもっとたくさん出回るようになることを期待しています。どんな花とも合わせやすく、小花としては存在感があるものの、主張しすぎないのはオンシジウムの大きな魅力だと感じています。
左から‘スノーホワイト’、‘オレンジスイート’、‘ピンクムーラン’。いずれも台湾から届きました。台湾はオンシジウムの生産が盛んで、日本で出回るオンシジウムの約9割が台湾産です。オンシジウムには黄色系以外の花色もあり、品種もとても豊富です。
オンシジウムを使ったブーケ&アレンジメント
『家庭画報』の2023年5月号「カーネーション特集」で紹介されたブーケを奥様がとても気に入っていたので、同じ雰囲気で贈り花を、とご主人からオーダーをいただきました。‘シルクミナミ’、‘バニラミナミ’、‘パックス’と3種のカーネーションに加えたのは優しいクリームイエローのオンシジウム‘エレナ’。ほかにスカビオサ‘レッドジェード’、アカシア‘オーレア’を合わせて。奥様の印象に残ったことがとても嬉しく、それを贈って喜ばせようというご主人の優しさも胸に浸みました。
台湾産のオンシジウム‘エレナ’をアップでどうぞ。花がスカートを広げて踊る女性にどことなく見え、ダンシングレディオーキッドという英名にも納得。
オンシジウム‘エレナ’とファレノプシス‘イエローアップル’。大小クリームイエローのランをシンプルに合わせたアレンジです。ほかにケイトウ‘プティフルーツ マーメイドピンク’、ダスティーミラー、コニファー‘ブルーアイス’を加えて。石垣島の美容師のご夫妻から、リタイアされる広島のかつての同僚へ、ねぎらいと感謝の贈り花です。