焼き物の聖地、信楽で一日楽しむ、食・創・買
陶芸の町、滋賀・信楽で、注目のレストランがオープン。食べるに留まらない、信楽流のガストロノミーツーリズムをご紹介します。
訪れたのは、信楽の窯元であり最大の売り場面積を誇る大小屋の隣にオープンした「十割蕎麦 東雲」。窯元として150年の歴史を誇る同社が、地域の魅力発信の場として新設した蕎麦処です。
1年半以上かけて宮大工が建てた伝統的な日本家屋。店内では、銘木として知られる鉄刀木(たがやさん)の一枚板で作られたテーブルが光ります。地域の土を使った土壁も相まって、空気の澄んだ店内です。一般営業はランチのみ。おすすめは「特選近江牛十割もり蕎麦」です。2950円。
味覚を研ぎ澄ませてほしいという願いから、胃が温まる蕎麦粥が全ての料理につきます。
独自に開発した、信楽焼を使った“水の性質変化”でまろやかになった水で打った蕎麦は、十割蕎麦とは思えないほどののど越しのよさが特徴。ランチ時は大変賑わうので、時間に余裕をもって訪れることをおすすめします。
京都「日本料理 櫻川」とのコラボディナーは、日本酒とのマリアージュを楽しんで
日本料理 櫻川のオーナーシェフであり、東雲ディナーの料理長も務める山本さんが客の前で焼いてくれるのは、かます松茸巻き。炭火でじっくりと焼いた季節の松茸が芳ばしく、日本酒との相性は抜群です。
東雲では「日本料理 櫻川」とコラボした完全予約制のディナー(2万6450円~)をアレンジできます。地場の食材を目の前で調理する特別な料理の数々は、まさにここでしか味わえないスペシャルなコース。世界のVIPから支持されている注目の酒蔵「黒龍酒造」の日本酒とのマリアージュが楽しめるほか地元の日本酒やワイン、フレッシュジンなどが楽しめます。もちろん、信楽焼のアーティストが登り窯で作った個性豊かな器も主役のひとつです。
左から日本料理 櫻川オーナーシェフ山本智史さん、大小屋4代目当主 奥田信泰さん、黒龍酒造 社長 水野直人さん
信楽の未来を担う、新たな取り組み
創業150年、地域を見守り続けてきた窯元・大小屋の使命は、地域の焼き物文化を残すことと語るのは、大小屋の四代目当主奥田信泰さん(71歳)。
「日本の伝統産業が減っている傾向にある今、信楽はこの焼き物の文化を残さなければならないと思っています。近年窯元は、残念ながら減っているのですが、実は若手の陶芸家は少しですが増えています。そんな現状の中、大小屋では、力のある陶芸家が思う存分に創作活動ができるよう、焼き場を無償提供しています。
のぼり窯では、1250~1300℃を維持し、置く位置や釉薬で陶器の色柄をコントロールします。
のぼり窯は火入れから4~5日かけて窯焚きをし、その間常に火を見る必要があります。さらに、その際に必要な薪は、300束と膨大です。
これを一人の作家が負担するのは大変なので、大小屋で4名の作家を集めて一度に焼き物を作ってもらっています。その4名の器は、東雲で楽しめるので是非ご覧ください。」
その他の作家やオリジナルの信楽焼は、信楽で一番の売り場面積を誇る大小屋で購入できます。
東雲で楽しんだ後は、専属スタッフが丁寧に教える陶芸体験を
のぼり窯の真横で行う陶芸体験では、専門のスタッフが丁寧に教えてくれます。予約なしでも受講でき、50分で2つの作品を作ることができます。
写真右から、陶芸を丁寧に教えてくれる瀬古茂樹さん。実際に取材時に作った2つのお皿。体験日から約2カ月程で届きます。ろくろ体験3850円
たぬきでもなく、焼き物でもない、信楽の新たなお土産品
密かに人気が出ていているのは、毎朝焼きあがるオリジナルの「石窯パン カンパーニュ」(1050円)。オーストリアの発酵種「ルヴァン」と、フランス産の硬水「コントレックス」を合わせてこね、石窯で焼き上げられます。芳ばしい小麦の香りと酸味のある味わいが特徴で、チーズやワインとよく合います。日持ちも2週間と長く、信楽の新たなお土産として人気を博しています。
食べるだけに留まらず、土に触れて、作品を愛でる……。信楽での新たな過ごし方を、秋の行楽に組み込んでみてはいかがでしょうか。
●十割蕎麦 東雲
滋賀県甲賀市信楽町勅旨2349
営業時間:昼11:00~15:30、夜17:00~21:00(夜のみ完全予約制)
定休日:金曜日
予約:電話0748-83-2220