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時代を経て愛されるボンボニエール──デザインに込められた慶びの心

2025.01.09

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〔特集〕学習院コレクションより 華麗なる皇室文化の象徴 幸せを贈るボンボニエール 明治時代に華族子女の教育機関として開校した学習院 ── 。昭和24(1949)年に開学した学習院大学では、同50年、研究施設として学習院大学史料館が設立されました。収蔵されているコレクションは実に25万点以上。皇族・華族ゆかりの品々は、日本の歴史と伝統文化を知るうえで欠かせない貴重なものばかりです。とりわけ明治時代より皇室の慶事の折々に下賜されてきたボンボニエールは、その可愛らしさ、職人たちの卓越した技巧により、多くの人々から愛されています。西欧発祥でありながら、今日では「日本皇室特有の工芸品」と認識されているボンボニエールの世界をお楽しみください。前回の記事はこちら>>

特集「幸せを贈るボンボニエール」の記事一覧はこちら>>>

戦争の時代を越えて、現在も制作は続く

大正時代から昭和初期に大流行し、技巧的にもピークを迎えたボンボニエールにも、戦争の足音が忍び寄ります。いわゆる「贅沢禁止令」が昭和15(1940)年に公布され銀製のものを作れなくなりましたが、ボンボニエールを制作する可愛くて洒落た慣習は揺るぎませんでした。陶磁器や木で制作され、この時代を乗り越えたのです。

敗戦後は11宮家が民間に降下、華族制度もなくなり、ボンボニエールも忘れ去られました。しかし、皇室では現在もボンボニエールを制作し続けています。現代ではお印を配した意匠や美しい色絵のものなどが彩り豊かに広がっているのです。


亀甲形鶴蒔絵螺鈿 皇太子御結婚宮中饗宴
大正13(1924)年5月31日~6月4日

皇太子裕仁親王・良子(ながこ)女王は大正13年1月に御結婚、宮中饗宴が4日間にわたり行われた。その際に下賜されたのが亀甲形鶴蒔絵螺鈿ボンボニエール。硬い紫檀地を鶴形に切り抜き、そこに同形に切った薄貝を嵌め込むという超絶技巧が施されている。

兎置物形鶴松文 久邇宮良子女王送別
大正13(1924)年1月19日

久邇宮家での良子女王御結婚に伴う送別の際のもの。細かい毛彫りが見事である。

雅楽太鼓形 昭和大礼 大饗第二日の儀
昭和3(1928)年11月17日

昭和大礼も大正大礼を踏襲して京都で行われた。大饗第二日の儀の列席者約200名に下賜されたのが、大饗会場に置かれた雅楽の鼉太鼓(だだいこ)を模したもの。金色の “二つ巴” が描かれた太鼓を銀糸で吊り、その周りを彫金された銀の雲形と2羽の鳳凰、火焔が取り巻く。

舞楽兜形 皇太子(現・上皇陛下)御誕生宮中饗宴
昭和9(1934)年2月23日

昭和8(1933)年12月23日、天皇・皇后に御結婚10年目、第5子にして、初めての男子・皇太子明仁(あきひと)親王殿下がお生まれになった。御誕生を寿ぐ宮中祝宴は翌9年2月23日から5日間にわたり開催された。列席者には舞楽「万歳楽(まんざいらく)」に用いられる鳥甲を模したボンボニエールが下賜された。

丸形鴛鴦文 皇太子(現・上皇陛下)御結婚祝宴
昭和34(1959)年4月13日

皇太子明仁親王殿下(現・上皇陛下)と美智子様(現・上皇后陛下)の御結婚祝宴の際のボンボニエール。天皇家紋である十六葉八重表菊を2羽の鴛鴦(おしどり)が取り囲むデザイン。鴛鴦は夫婦の仲睦まじいことの象徴である。

丸形鳳凰文 平成御即位饗宴の儀
平成2(1990)年11月12日

平成の御即位の際のボンボニエールは鳳凰が羽を広げた立ち姿が表されている。鳳凰は中国の神話由来の瑞鳥で、36種の羽を持ち、聖徳のある天子が治める平和な世にのみ出現するとされた。

【お印とは】

皇族・華族などが、記名の代わりとして、身の回りの品につける印章のこと。御誕生や御結婚に際して決められる。天皇陛下は「梓(あずさ)」、皇后陛下は「ハマナス」と植物にまつわるものが多いが、上皇陛下の「榮(えい)」のように漢字のみの場合もある。ボンボニエールの意匠には、このお印が多く用いられている。

文/長佐古美奈子(霞会館記念学習院ミュージアム学芸員) 撮影/鈴木一彦

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