〔特集〕美味が待つ冬の湯宿へ 日本人の冬の旅の原点──それは、大地から湧き出る温泉に浸かって心身を整え、日本各地に産する美味に舌鼓を打つこと。非日常を感じながらも快適に滞在できて、その土地が誇る自慢の料理に出合える温泉宿を、厳選してお届けします。
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湯量自慢の宿でふぐの妙技を味わう
やまぐち・湯田温泉 古稀庵(こきあん)【山口 湯田温泉】
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大皿の絵柄が透けて見えるほど薄く引かれた「ふぐ刺し」と旬野菜とぶつ切りのふぐを堪能する「ふぐ鍋」は毎冬必ず食べたい王道の美味。
山口市の中心部で800年以上の歴史を誇る湯田温泉は、山陽路髄一の湯量に恵まれた地。アクセスのよいロケーションにありながら、館内は山荘のような静寂に包まれる「古稀庵」は、全16室にかけ流しの露天風呂を備え、別荘のように過ごせる宿として多くのリピーターに親しまれています。
1日に2000トン湧き出る湯量自慢の湯田温泉。無味無臭で肌に柔らかくなじむアルカリ性単純温泉を大浴場でのびのびと満喫。
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館内には地元の萩焼を用いたアート作品も。
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そこはかとなくアジアのリゾートを思わせる温水プール付きの客室「蛍葛」。子どもの宿泊も可能ゆえに、三世代揃っての滞在客も多い。
最上級の天然とらふぐをフルコースで味わう冬は、宿の熱気がとりわけ高まる季節。
「天然ものは身も皮も別格の弾力があり、嚙めば嚙むほど心を惹きつけるうまみがあります。鍋にしても不思議とあくが出ず、締めの雑炊まで楽しみは尽きません」と熱く語るのは料理長の西 嘉輝さん。
ふぐフルコースより。時計回りに地元の銘酒「獺祭(だっさい)」のひれ酒、白子の茶碗蒸し、ふぐの握りずし、白子の軍艦ずし、煮こごり、松前焼き、あらの白味噌仕立て、から揚げ。
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ふぐや野菜のうまみをすべて含んだ雑炊。
冬も深まればふっくら濃厚な白子も登場。軍艦ずし、茶碗蒸し、松前焼きで堪能することができます。
ふぐは南風泊市場の老舗卸・酒井商店が目利きしたもの。ふぐ刺しのためのねぎ「安岡ねぎ」を巻いて。
様々な調理法でふぐを多角的に味わう中、コースの華は何といっても王道のふぐ刺し。料理人の腕が光る極薄のふぐで下関の地元野菜・極細の「安岡ねぎ」を包み、橙(だいだい)が香る甘めのポン酢でいただくと、ふぐのふくよかなうまみと爽やかな香りが一体となり、至福のひとときは最高潮へと導かれます。
やまぐち・湯田温泉 古稀庵住所:山口市湯田温泉2-7-1
TEL:083(920)1810
基本料金:1室2名利用で1泊2食付き1名3万6300円~ ご紹介した「蛍葛」は同5万6100円~(天然ふぐコースは1名2万6400円追加) 全16室 IN14時/OUT11時
(次回へ続く。
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