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中村勘九郎さん・中村七之助さんが語る「猿若祭二月大歌舞伎」 遠くて近い、令和と江戸

2025.01.31

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人情味あふれ、ちょっとクレイジーな江戸の人々

夜の部で勘九郎さん・七之助さんが出演する『人情噺文七元結』は、三遊亭円朝の人情噺を元にした歌舞伎の世話物を代表する作品の一つです。

勘九郎さん「現代社会で忘れがちな、江戸時代ならではの人情に、ほっこりしていただければ。私と七之助が夫婦役を演じるのも珍しいかもしれません」

七之助さん「おかしくもあり、ちょっぴり哀しくもある、心温まる大好きな芝居です。今回は兄の“家族写真のように撮りたい”というアイディアで、ポスターは左官長兵衛をつとめる兄、女房お兼をつとめる僕、娘お久の勘太郎、手代文七をつとめる鶴松で撮影しました」
©️松竹

©️松竹

勘九郎さん「長兵衛は、娘のお久が身を売ってこしらえた大金を“人の命は金じゃ買えねえ” と見ず知らずの文七にポンと与えてしまうわけですが、とんでもない人ですよね。なかなかできることではない。ポスタービジュアルはハッピーエンドの場面のように見えますが、この後、文七とお久は安泰かもしれませんが、長兵衛がこのまま真っ当な人間になれるとは僕は思えないんですよね(笑)。禁煙していても一本吸ってしまったら元に戻ってしまう人がいるように、もう博打はしないと言っていますけれど、どうなることやらと思ってご覧いただいても面白いかもしれませんね」

もしも江戸時代にタイムスリップしたら?

勘九郎さんと七之助さんが、江戸時代に生きる人物で、共感したり興味を持っているのは誰でしょうか?

勘九郎さん「一度演じてみたいとずっと思っているのは、平賀源内。エレキテルを発明したかと思えば浄瑠璃作品も手掛けていて、生まれた時代を間違えたとも言われますが、魅力的な人物ですよね」

七之助さん「浮世絵では歌麿の美人画は何度も見てきました。彼が描く江戸の女性たちの曲線は素晴らしいと思います」

勘九郎さん「共感、という意味では蔦屋重三郎たちが幕府に弾圧され、出版禁止になったり財産を取り上げられてしまう状況の中、それでも奮起する姿には気持ちが重なりました。状況は違いますが僕らもコロナ禍に芝居は不要不急と言われた時は本当に悔しかったので、あの時のこんちくしょう!と思いながら静かに灯る心の炎は今回の芝居に活かしたいと思っています」

では、江戸時代にタイムスリップするとしたらどこに行き、何を見たいですか?

七之助さん「もちろん芝居は観たいです。当時の名優たちにも会ってみたい。でも現代に帰ってきた後の自分の芝居の参考に行ってみたいのは、吉原。実際はどんな雰囲気だったのか、生で感じてみたいです」

勘九郎さん
「僕も芝居も観たいですが、吉原かな。遊ぶのではなく隅々まで見学したい。吉原田んぼの真ん中に塀で囲われたキラキラした世界があって、どんな匂いがしていたのか……」

『きらら浮世伝』と『人情噺文七元結』のどちらにも登場する吉原は、江戸の文化が花開いた華やかな場所でもある一方で、そこに暮らす女性たちにとっては外の世界と隔絶した苦界でもあります。

七之助さん「歌舞伎の芝居でいえば『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』には、そんな吉原の二面性が見事に描かれています。昨年、初役でつとめさせていただいた八ツ橋は、花魁としての美しさと哀しさ、お客に対する花魁としての部分と女性の部分を併せ持っていて、いつかまたぜひ演じさせていただきたいお役ですね。『きらら浮世伝』のお篠は、シュッとした遊女から吉原の外の世界へと歩み出し人のために生きていきます。彼女の人生の中での気持ちの流れにも、ぜひ注目していただけたらと思います」

勘九郎さん「歌舞伎の芝居には、現代とは全く異なる価値観もたくさん出てきます。でも、たとえば稽古の中で演出の横内謙介さんが歌麿のことを“川越のヤンキーだと思って!”とおっしゃっていたように、一人一人の気持ちやキャラクターには現代に生きる僕たちと重なる部分もたくさんあると思います。『きらら浮世伝』も『人情噺文七元結』も、人と関わらないと生きていけなかった江戸の人たちの温かさを思い起こさせてくれる芝居になればと思っています」


松竹創業百三十周年「猿若祭二月大歌舞伎」

2025年2月2日(日)~2月25日(火)
※10日(月)、18日(火) 休演
歌舞伎座

【昼の部】11:00~

『其俤対編笠 鞘當(そのおもかげむかいのあみがさ さやあて)』
『醍醐の花見(だいごのはなみ)』
『きらら浮世伝(きららうきよでん)』

【夜の部】16:30~
『壇浦兜軍記 阿古屋(だんのうらかぶとぐんき あこや)』
『江島生島(えじまいくしま)』
『人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)』

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/926

撮影/本誌・坂本正行 取材・文/清水井朋子 スタイリング/寺田邦子 ヘア&メイク/中村優希子 衣装協力/ニューヨーカー(ダイドーフォワード)

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