頼れる親戚も知り合いもいる。生まれ育ったまちだから安心
近所づきあいが濃密で、まちじゅうに教え子、友達がいて、介護スタッフも顔見知り。常に誰かが須美子さんの様子を気にかけてくれる地域だからこそ、理恵さんも安心して東京で仕事ができたといいます。なかでもキーパーソンは、母の実家の旅館を継いだ親戚で、理恵さんが弟のように慕い、頼りにする存在の男性です。理恵さんが不在でも迅速に話が進むよう、ケアマネージャーとも直接やりとりをしてもらい、後で報告を受ける体制を整えました。
もちろん任せっきりではありません。介護スタッフや世話になっている近所の人には事あるごとに電話をかけ、富山に行ったときは顔を出し、「何か困ったことはないですか? いつでも連絡ください」と密なコミュニケーションを心がけています。
「それしかできない、でもそれがとても大事。違和感や不安も小さなうちに気がつけば大きな問題になる前に手を打てますから」。
心に残る会話
母「こんなに長生きして、迷惑かけて申し訳ないね……」
理恵さん「とんでもない! 私はお母さんが生きていてくれたらそれだけで幸せだよ。お母さんが生きていれば周りの人はみんな幸せなの」
母「……そお? それならよかった」
──私は、言葉というものは必ず相手の心に刻まれていくものだと思っています。たまにですが、母がらしくない弱音を吐いたときは、繰り返しこう伝えます。別れるときや電話を切るときにも、必ず伝えます。「いい? これだけはちゃんと覚えておいて」と念を押しながら。