男性が、父親である人が、母親になりたいって思ったっていいよね
小学校に入って間もなく、養子であることを聞いたふくだ監督。「まったくショックは受けず、今思えば、アイデンティティを得た、みたいな(笑)」と受け止め、「むしろめっちゃラッキーやなと思ってます」。
「そう思えるようになったのは二十歳を過ぎてからでしたけど、私を産んだ人はロッカーやトイレに捨てざるを得ない状況の人だったかもしれない。でも、たまたま社会に接点がある人で、施設に託すという選択肢を持っていて、それを実行に移せる人だった。それで、新聞に載った私を両親が見つけて“まぁ! かわいい!!”って0歳で引き取ってくれたんです。だけど、世間一般とはちょっと違う。だから、家族のことで苦しむという感覚はすごくわかるし、そういう人に向けて、違う見方もあるんだよということは言いたいなと常々思っていました」
それが、父が母になるという形で描かれるのは……?
「子供が生まれたら、母親になれるのか、なってしまうのか。そうではないじゃないですか。子供を生んだことで、母親にならざるを得ない状況に周りから押し込められるというか。そうやって押し込められている人って、めっちゃしんどいやろうなと思っていて。でも、父から見れば、子供に必要とされたり、深い関係性が築けるのは母親っていう感覚もすごくあると思うから、父は母をうらやましいと思うかもしれない。だから、父親制・母親制ということを……それは実際のところ存在していますけど、男性が、父親である人が、母親になりたいって思ったっていいよね、女の人が母親である必要もないよねっていう感覚です」
ふくだ監督から、これは愛の映画だと伝えられたそうで、「この映画に関わったすべての人の愛が詰まっている映画」と松本穂香さん。